色と無色の無限ループ

2026.07.13PHOTOGRAPH and WOLF

SONY α7CII / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

風に吹かれて陽の光を浴び、あぁ写真撮るって気持ちいいぜとヨダレを垂らしながらカメラをぶら下げて歩く。人や人がつくったものを撮るのも悪くないが、どちらかと言えば人間以外の生きものを撮る方が好きだ。植物や動物といった自然界の断片から地球という1つの生命を感じるのが好きなのかもしれない。近所を歩いても遠くの場所へ行っても、当たり前のようにあるものの中にある造形や色の素晴らしさを感じる。そして世界を見ているようで何も見ていなかったことに気づくのである。女性の気を引いたり懸命になって金を稼いだり満員電車に乗ってイライラしたり、そういう人間社会のくだらないことに夢中になっていると世界を何も知らないまま生きることになる。写真を撮るようになってよかったことは、人が地球上に生きている種族の1つであるという至極当たり前のことを自覚できることだ。

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

写真撮るのって楽しいね。そういう原石のような欲望を、純粋なまま何年も維持するのは難しい。同じことを続けていると必ず飽きるからだ。日常の些細なものだけでなく、酒やセックスや征服といった刺激的なものから、家族や土地や常識といった普遍的に思える概念まで、我々は例外なく飽きてしまう。変化を求めるのは向上心の表れだと思えば前向きに捉えることもできるが、ただ単に同じ行動や思考を維持する体力がないだけなのかもしれない。写真を撮るのにハマって、あるいはカメラをイジることにハマった人が、数年経ってほとんど写真を撮らなくなってしまうパターンは結構多いと思う。飽きることは悪いことじゃないし、何かをしなくなるのは大切なプロセスだ。困るのは続けていたい持ち続けていたいと心に決めたものも、他のくだらないものと同じようにあっさり飽きてしまうことだ。せっかく出会えた楽しみも、飽きてしまってはもったいない。だから飽きないための工夫が必要になる。写真を撮るなら撮るものを変えてみたり、撮る場所を変えてみたり、撮り方を変えてみたり、機材を変えてみたりといった感じに、自身の撮影行為に変化を意図的に用意すると割と飽きない。モノクロ撮影もその1つだ。

FUJIFILM X-E4 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

FUJIFILM X-E4 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

モノクロ写真を撮るのは楽しい。「色がない」ということで、色の呪縛から解放されるのがいい。レンジファインダーと一眼レフカメラの場合、残念ながらファインダーから見える世界をモノクロにすることはできないが、ミラーレスカメラのEVFならモノクロの世界をファインダーを覗いた瞬間から楽しむことができる。デジタル現像もカラーよりは早く作業できる。何たって色がないんだから、色調整というプロセスも不要だ。カラーの世界をモノクロに変換しただけで「なんかいいよね」というモノクロマジックもある。美しさのカケラも感じられないくたびれたオジサンの姿もモノクロで撮影すると不思議と味わい深いものになる、それがモノクロマジックである。

SONY α7CII / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

モノクロ写真のトーンについては好みが分かれる。ハイコントラストを好む人、階調の豊富さを好む人。僕は明らかに前者で、柔らかく繊細なモノクロ写真よりも森山大道やアラン・シャーラーのような強めの作風の方が好きだ。カラーでも同じような好みの傾向があるが、モノクロではその好みがより顕著になる。階調の豊かさを求めるなら、モノクロよりもカラーの方が向いている気がするし、中途半端に階調の再現ばかりに神経を使っていると、わざわざモノクロにする意味がないような弱腰な写真になってしまう。アンセル・アダムスのゾーンシステムとかグレーの階調とかを完全に無視するわけにはいかないが、もっと重要なのはモノクロならではのパワーだ。ただ単にカラー写真をモノクロに変換したもの足らない写真か、モノクロの良さを活かして構成された表現か、紙一重に見えてそこには大きな差がある。モノクロだと本質が写るとか、ポートレートはモノクロの方がハイレベルだとか、そういうのも根拠のない話でカラーでもモノクロでも撮影者がよければ本質は写るし表現力や美意識が求められるのはカラーでもモノクロでも同じだ。ただ間違いなく言えるのは、色のないモノクロは現実とかなり違うということ。だから目の前の情景が素晴らしかったとしても素晴らしいモノクロ写真になるわけじゃない。色のないことを条件に組み立てる必要がある、それがモノクロ写真の難しさでもあり面白いところでもある。

SONY α7CII / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

モノクロ写真ばかり撮っていると、次第にカラーに飢えてくる。カラー写真をパシャパシャ撮っていると、今度はモノクロが撮りたくなる。そんな感じで色のある世界とない世界を行ったり来たりしているのがとても楽しい。

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7CII / PENTAX Super Takumar 28mm F3.5

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7CII / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

SONY α7CII / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

FUJIFILM X-E4 / TTArtisan 23mm F1.4 C

FUJIFILM X-E4 / TTArtisan 23mm F1.4 C

少し前に妻がソフトクリームにハマっていた時期があって、美味しそうな店を探しては2人でよく食べに行った。近所にある生チョコ専門店のチョコレートソフトが美味しくて、そこのソフトクリームを何度もリピートした。ミルクチョコとビターチョコの2種類があり、それを交互に口に運ぶのがたまらないのだ。こっちも美味しい、こっちも負けずに美味しいね。その繰り返しが永遠に続いて欲しいと思うほど。その感じはカラーとモノクロで写真を楽しむ行為によく似ていると思う。モノクロは最高だよね。カラーも捨てがたいね。そんな無限ループで怠惰な幸福が続いていくのである。

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