光に反応するマインド
2025.01.15PHOTOGRAPH and WOLFどうも最近愚痴っぽくなってるな、と自分のことを思う。愚痴っぽいジジイというのも大変見苦しいものだが、どうにもこうにもやめられないのだ。何に対してブツブツ言ってるかと言えばそのほとんどが政治とメディアに対する批判で、どーしようもなく低次元であきれるほどモラルのないその有様に苛立つ。政治の茶番もメディアの浅はかさも、若い頃は「死ぬまでやってろ」と他人事だったが、パンデミックの対応や最近の動向が何かにつけ我々の幸福感を阻害し、前向きに頑張っていこうとする経済活動とやる気のある若い人のモチベーションをこれでもかと下げ続けるのでさすがにウンザリする。頑張ってる人が報われる、政治家たちはそういう国にするつもりがさらさらないらしい。大人たちのツッコミどころ満載な決定は日本だけの話ではない。最近話題の韓国や大統領選で盛り上がったアメリカにしても、醜い大人たちの小競り合いが続いている。子供たちに世界の成り立ちを説明しなければならないとしたら「大人たちはバカばっかりだから君たちが世界を再構築しようね。マジで申し訳ないね。」と言うしかないだろう。我々が子供の頃にそんな悲観的な話をする大人など1人もいなかった。しかし、そろそろ子供たちには真実をベースにした教育が必要だと思う。なぜならクオリティの低い教科書や情報の浅いニュースを頼りにしていたら、いつまでたっても世界を認識することができないからだ。仲間で団結して押し切ろうとする政党のシステムはまったく民主主義じゃないよね、選挙活動がメインになってしまう政治家という職業は明らかに不毛だしおかしいよね、新聞やテレビは報道に偏りがありすぎるから30%くらいしか信じない方がいいね、大人たちの9割はバカだから見習わない方がいいよ、そういうことを子供たちに教えていかないと未来永劫くだらない茶番が繰り返されることになる。ブツブツ、ブツブツと愚痴りだしたらキリがない。しかし、文句ばかり言って生きるのは健康に大変よろしくないので、気を取り直して世の中のいい面を見ていこう。光と影の光の方、つまり明るい部分のことである。
世界が光と影で成立しているように、写真も光と影によって構成される。撮影は「光をどう捉えるか」だとよく言われるが、考えても考えなくても光も影も勝手に写ってしまうので、そんなに気負って考える必要はないと思う。何年もしつこく写真を撮りつづけていると、光が当たっている部分や光によって影が落ちている部分に自然と目が行くようになってくる。これは多くの写真撮りが経験していることだろう。あぁ、この光の当たり具合がいい感じだねとか、うーん、この光が飽和している感じが素晴らしいねとか、何を撮っているかという写真にとって最も重要なことよりも、むしろ目の前にある光のコンディションに魅了されてシャッターを切るのである。撮った写真で誰に何を伝えようかとか、そういう世俗的なアレコレを完全に放棄して、ただただ光の「いい感じ」を写真に撮るのは気持ちがいい。
撮る側で光をどう受光するのか、それを試行錯誤するのも面白い。ミストフィルターをレンズの先端につければ光が拡散されてひと味違う写真が撮れる。
ホワイトミスト、ブラックミスト、自作のミストフィルターと色々テストしてみたが、それぞれ傾向が異なる。順光では圧倒的に自作のフィルターが好みで、逆光ではホワイトミストがいい仕事をしてくれる。ニュアンスに1番色気を感じるのはブラックミストで、気分に合わせて使っていけばレンズ1本分買い足したのと同じくらい楽しめる。自作のフィルターはオールドレンズの曇り玉のように強烈で、画質を著しく低下させる。これは使わずに放置されていた市販のプロテクターフィルターにスプレー糊をババっと適当に吹いた代物だ。こういうことはアナログ時代にカメラマンたちも結構やっていたと聞く。バセリンを塗ったり、薄いガーゼを貼り付けたり。そういうアナログな工夫はいつの間にかデジタル処理に置き換わってしまったが、終わらせてしまうのはもったいないような技術がたくさんあるのだ。
ミストフィルターを使った写真撮影は結構楽しい。なにせレンズの先につけるだけで、何気ない風景やモノが情緒的で物語を帯びた何とも言えない雰囲気になってしまうのだから、そりゃあ楽しいに決まっている。フィルターをつけるかつけないか。たったそれだけなのに、M型ライカやハッセルで撮ると違うとか、高品質なレンズで撮ると違うとか、そういう違いの次元をあっさり追い越すほどの「違い」がある。ミストフィルターの使い道は夜景撮影くらい、そう思っていたが夜ではなく晴天の屋外でも結構効果があるようで、拡散された光の飽和をファインダーから見ているだけで「いいねぇ」とニヤけてしまう。
ミストフィルターが我々に語りかけてくる教訓は「受け手」の有り様だ。世界は同じ、光の発光は同じでも、光を受光するコンディションが違えば撮れる写真が違ってくる。世界をどう見るか、世界をどう受け取るか。幼い頃、世界が光に満ちていたのは、世界が変わったのではなく自分が変わったからだ。偏見や猜疑心という心のサビをごしごし落として自分自身のセンサーの感度を上げていけば、素晴らしい光にもっと反応して魅力的な写真が撮れるようになる気がする。
このページの撮影機材
LEICA M11
SONY
α7CII(ILCE-7CM2)
Nikon Zf
LEICA
Summicron 50mm F2.0 Collapsible
Voigtlander
ULTRON Vintage Line 35mm F2 Aspherical
Voigtlander
APO-SKOPAR 90mm F2.8
PENTAX
Super Takumar 50mm F1.4
MINOLTA
M-Rokkor 28mm F2.8
MINOLTA
M-Rokkor 40mm F2
-
写真集「BLUE heels」
¥1,100 -
写真集「Nostalgia」
¥1,100 -
写真集「植物美術館」
¥1,100 -
写真集「花美 1」
¥1,100 -
写真集「花美 2」
¥1,100 -
写真集「花美 3」
¥1,100
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lens
- LEICA Summicron 50mm F2 1st Collapsible
- Thypoch Eureka 50mm F2
- MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8
- MINOLTA M-Rokkor 40mm F2
- MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4
- Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ
- Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5
- Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ MC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 E-mount
- Voigtlander NOKTON Classic 40mm F1.4 SC
- Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC
- Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8
- PENTAX Super Takumar 50mm F1.4
- PENTAX Super Takumar 55mm F1.8
- PENTAX SMC Takumar 200mm F4
- Nikon Nikkor-H Auto 50mm f2
- Nikon Ai Micro-Nikkor 55mm f/2.8S
- CANON 50mm F1.8 Ⅱ
- CANON 100mm F3.5 Ⅱ
- ZEISS Planar T*2/50 ZM
- GIZMON Wtulens 17mm F16
- OLYMPUS M.ZUIKO 12mm F2.0
- OLYMPUS M.ZUIKO 25mm F1.8
- OLYMPUS M.ZUIKO 40-150mm F4.0-5.6R
- LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ
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