狙い通りに的を射る

2022.09.20PHOTOGRAPH and WOLF

LEICA M11 / LEICA Summicron 50mm F2 Collapsible

自分の思い通りにならないと不機嫌になる。つまり、それは子供のことである。大人になると世の中は思い通りにならないことばかりだと知り、我慢することや諦めることに耐性ができていく。特殊な環境下の人をのぞけば、多かれ少なかれ誰しも通る道だ。しかし人間とはよく深い生きもので、どうにかして思い通りに物事を動かしたいと思ってしまうのだ。100%は無理でも70%くらいならいけるんじゃないか?毎回とは言わないけど月1回くらいならいかがでしょう?という感じで食い下がる諦めの悪い人のことを、世の中では意識が高い系と呼ぶのかもしれない。渾身の力で放った矢が、自分が描いた通りに美しい弧を描いて的に刺さる。そういう行為は中毒になるほどの快楽がある。

OLYMPUS PEN-F / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

OLYMPUS PEN-F / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

シューティングと呼ばれるように、写真を撮るという行為には何かと狙いをつけてゲットする所作がある。フォーカスという狙い、トーンという狙い、見る人の印象という狙い。明るい世界をわざと暗く撮ったり、柔らかいものをあえて硬く撮ったり。撮影者が意図した世界観をカメラとレンズと現像で形にしていく。写真の出来不出来を決めるのは画質や色味といった些細な事柄ではなく、どういう写真にしたくて撮ったのかという狙いだ。いい感じに撮れたと思って現像してみると期待したものと違っていてガッカリする理由は、写真の狙いが的外れなことが多い。矢を放った方向にそもそも的がなければ矢が刺さるわけがないし、的に向かって放っているのにうまく命中しないのは見ているようで見えていなかったり、的に届かせる技量を持っていなかったりと、何かしら残念な理由がある。的に届かないだけなら足りないものを習得していけばいい。矢はいずれ的に届くようになる。どうにもならないのは自分がいったいどの的を狙っているのかわからない場合だ。

写真を撮ることで一旗上げようとか、金にしようとか、いいねを稼ごうとか、そういう目的はない。外の光や風の中に身をおいて写真を撮っていることがただ単に好きなのだ。だが、無目的に写真を撮り漁っていると、自分が何に向かって写真を撮っているのか見失うことがある。頭の中がムズムズしたまま写真を撮っていると、撮った写真までムズムズした気持ちの悪いものになってしまうので「今日はゾクゾクするようなモノクロを撮ってみるか」「今日は澄み切った空気を撮ってみるか」といった具合に、写真の終着点を設定していく。指針がはっきりしている立派な人は、そういう設定を生涯という長いスパンで考える。僕のようにいい歳こいて軸がブレまくりの人生を謳歌している輩は、短いスパンで考えることで気持ちよく写真を撮ることができるようになる。

LEICA M11 / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

LEICA M11 / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

LEICA M11 / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

LEICA M11 / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

LEICA M11 / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

LEICA M11 / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

OLYMPUS PEN-F / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

LEICA M11 / LEICA Summicron 50mm F2 Collapsible

LEICA M11 / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

色味をはじめ肉眼で見るのと同じ状態を、写真の中で再現することにまったく関心がない。リアルを伝達する目的なら、もはや写真より映像の方がはるかに適しているし、表面的な事実を再現する写真はつまらない。写真に描かれるものはシンプルな言語で置き換えることのできない、もっと人間的な何かであってほしい。

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

ゴルフでも音楽でも科学でも、予測や努力や苦悩の先に自身がイメージした的に矢が刺さる瞬間があると思う。知名度を得られなくても、金が入ってこなくても、いいねをたくさんもらえなくても、狙った写真が撮れた日は最高の気分で夜が更けていく。

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