光と影のロジック

2019.01.17PHOTOGRAPH and WOLF

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

光と影、表と裏、ポジティブとネガティブ。双方を認める考え方が好きだ。女の子とまともに手を繋いだこともない中学生の頃、ぼんやりと月のことを考えていて「光があれば必ず影ができる」という普遍的なロジックに気づいて衝撃を受けた。つまり、あらゆる物事に付随する「2面性」のことだ。何だかとんでもない大発見をした気分になって、学校の先生や友人にそのことを話したが、誰も関心がなさそうだった。表があれば必ず裏がある。それはしごく当たり前のことだが、それを普遍的なものとして認識するかしないかでは、世界の見え方がまるで違ってくる。

PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

SONY α7R2 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

SONY α7R2 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

絶対的な正解がないことと同じく、絶対的な不正解などないということを、一体どれだけの人が知っているのだろうか。厳密には正しい解答などどこにもない。代わりに楽しい解答や情けない解答があるだけだ。すべてのものには必ず「反面」がある。昔は「美人は性格が悪い」なんて言って不美人を慰めていたが、性格のいい美人は山ほどし、それとはちょっと違う。一般的に悪いこととされることも、反対側から見ると「いいこと」になることもある。例えば野球の試合でも、勝ったチームか負けたチームか、どちらのチームを応援していたかで同じ試合でもまったく違ったものになってしまう。都市で暮らす人にとって雨の日は鬱陶しいだけだが、農家の人にとっては雨の日がないと死活問題だ。自分の仕事が忙しいということは誰かの仕事を奪っているということで、自分がモテないということは自分以外の誰かがモテているということだ。こういう普遍的な2面性のことを心理学や宗教では何と呼ぶのだろう。

PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

SONY α7R2 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

SONY α7R2 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

SONY α7R2 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

写真で光を表現しようとすると、自ずと影のことを意識しなければならない。もちろん、光だけで光を表現することもできると思うけど、どちらかと言えば影が光を際立たせる写真が好きだ。黒に近い影の部分なんて、何ていうか華やかさはないし、評価の対象にされにくいけど、光と同等、いやそれ以上の働きをしていると思う。全体像を見えにくくしている影の存在が、光や色をより印象的にしている。そんな写真は世の中にたくさんある。

例えば人や物の長所、短所なんてものも同じように考えることができる。特長、というとポジティブなことだけが人に伝わるスペックになってしまうけれど、物事の性格を形づくる上で、長所よりも短所の方が強く影響してるんじゃないのか。そう考えると、一般的に短所と言われる部分を必要以上に平均的なものにしていく「改善」は、持ち味の個性を奪っていることになる。マニュアルレンズばかり使っている奇特な人たちは、このニュアンスを経験から理解できると思う。裏があってこその表。影があってこその光。欠落があってこその魅力。TakumarやM-Rokkor、Nokton Classicを使うたびにそう思うのである。

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

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