人間は動物よりも優れた生きものか?

2021.02.09PHOTOGRAPH and WOLF

LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱで撮影01

OLYMPUS PEN-F / LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

ここ4年ほど熱心に写真を撮り続けて、わかったことがある。実はオールドレンズが好きなのではなくて、マニュアルレンズで写真を撮るのが好きだということ。レリーズを半押しすれば瞬時にピントが合うオートフォーカスと違い、マニュアルフォーカスの場合撮る人が能動的にピントを合わせにいかないとピントの合った写真は撮れない。そういうスタイルが性に合っているのだと思う。もちろんオールドレンズのファジーな部分も好きだ。だがオールドレンズがオートフォーカスだったら、僕はきっと使わない。

人物だったら手前の目にピントが合えばいい、というわかりやすいケースならいいが、マクロや開放で微妙なポイントにピントを合わせたい場合に、マニュアルフォーカスの方が力を発揮する。動くもののピントを追いつつピントは合っていないがとりあえず撮ってしまえ、という乱暴な力技ができるのもマニュアルフォーカスの大きな特長だ。オートフォーカスレンズが世界から消え失せても僕は全然困らない。そう思っているが、半押しでピントの合う楽チンレンズがないと困る場面もある。例えば数メートル先のよく動く動物を撮影する時だ。しょっちゅう動物の写真を撮っているわけじゃない。だが幸いにも近所と呼べるほど近い距離に動物園があっていつでも行ける。いつでも行けるのに撮らないなんてアナタ、もったいないじゃないのアナタ、という心の声が聞こえてきて望遠ズームレンズを1本買った。新たに買うことなんてない、そう思っていたオートフォーカスである。やれやれ。

LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱで撮影02

OLYMPUS PEN-F / LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱで撮影03

OLYMPUS PEN-F / LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

動物園の動物たちは檻に囲まれている。この檻を突破するためには300mm近い望遠が合った方がいいだろう。「動物園で暮らす動物」ではなく「動物」を撮りたいわけだから、手前の檻がチラチラ写ってしまっては台無しだ。シャッタースピードは速い方がいいし、高感度ノイズを考えるとフルサイズセンサーで撮った方がいいのかもしれないが、フルサイズで300mmのレンズというとデカイし重いし価格も高い。そこでマイクロフォーサーズの登場である。オリンパスのPEN-Fに、パナソニックのLUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱを組み合わせる。このレンズなら35mm換算200-600mm相当の画角で撮影できる。カメラとレンズでメーカーが違うからレンズの手ブレ補正は使えないが、手持ちで映像を撮るわけじゃないからカメラ側の手ブレ補正だけで充分だろう。ただし、オートフォーカスレンズは、ピントが合ったつもりが合っていないことがある。それをカメラで確認するのは難しく、僅かなピントのズレを確認できるのは現像する時だ。キャノンやニコンはどうなのだろうか。最新のカメラなら事情が違うかもしれない。PEN-Fでもフォーカスポイントを動かすことができるが、動物のようにこちらの思い通りに動いてくれない相手を撮る場合、細かいことはさておき、大体ピントが合ったと思ったら迷わずバンバンシャッターを切った方が良さそうだ。

LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱで撮影04

OLYMPUS PEN-F / LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱで撮影05

OLYMPUS PEN-F / LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱで撮影06

OLYMPUS PEN-F / LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱで撮影07

OLYMPUS PEN-F / LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

動物の写真を撮っていると、彼らは我々人間よりも劣った存在なのだろうか?と考えてしまう。火と道具を使うようになってから、人は地球の王者のように君臨している。飛行機の乗って地球の隅々まで渡り歩いてテリトリーを広げ、先住民に断りもなくバンバン土地を人間用に変えてしまうのが我々人間だが、そういった力を持ったのは2000年前、あるいは300年前という最近の話で、言ってみれば新参者の成金のようなものだ。圧倒的な火力、知力、制圧力を持っていることで、地球上の頂点に君臨している。だが同じ地球で暮らすひとつの種族と考えるとどうだろう。我々は精神も肉体も嫌になるほど貧弱だ。何かしら楽しいことを見つけないとあっという間に崩壊してしまうメンタル、服を着ないと成立しない弱い体。子供の頃は受験に怯え、大学に行けば就職に怯え、おひとり様に怯え、家計のやり繰りに怯え、老後に怯え、ほとんどの人は未来への不安を抱えながら一生を終えていく。すぐ病気になって、すぐ怪我をして、すぐ老化する。あまりにも弱く、あまりにも脆い。それが我々である。感情表現についても貧弱だ。うちで一緒に暮らしている2匹の小さな犬たちに毎日毎日同じ食事をあげ続けているが、「ご飯食べるよー」と声をかけると彼らは毎回大喜びして飛び跳ねる。とにかく犬たちは嬉しさの表現が素晴らしい。僕らはどんなに美味しい食事が待っていても、飛び跳ねることはないだろう。

LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱで撮影08

OLYMPUS PEN-F / LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

ファインダーの向こうに見える動物たちには、檻の中に閉じ込められていてもどこか芯のある強さを感じる。服に頼らず自立した肉体。鋭い視線。生きることとあまり関係のない些細なことなど気にしないような強さが漂っている。もちろん、弱い部分がないわけじゃないだろう。しかし何と言うか、生まれてから死ぬまでの短いプロセスが地球という大きな枠組みの中で出しゃばらずに自立している、そんな佇まいがある。そして何より姿が美しい。人間は動物よりも優れた生きものか?その答えは明白だ。

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