M-Rokkor 28mmの逆襲

2018.10.19PHOTOGRAPH and WOLF

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

その昔ミノルタがライカと提携してライカMマウントのカメラとレンズを国内で展開した。ライカと契約を解除した後に発売されたのがM-Rokkor 28mm F2.8だ。レンジファインダーカメラ用につくられたこのレンズは、重さ135gと非常にコンパクトで外観はライカのレンズにとても似ている。割と状態のいいものを割といい値段で買ってPEN-Fにつけて撮ってみたが、個性も少なく控えめで、ぐっと来るものがなかったのでしばらく放置していた。そう言えばフルサイズで撮ったことがなかったと気づき、マウントアダプターを使ってα7R2に付け、夜明けのカットを撮りに出かけた。

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例02

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例03

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

誇張しすぎないワイド感。きめ細かに再現されるグラデーション。嬉しい驚きとともに、オールドレンズはフルサイズのカメラで使うことで活きてくるいうことを改めて実感する。28mmは本来「広角」のレンズだが、レンズの画角をトリミングしてしまうAPS-Cやマイクロフォーサーズでは「広角」にならない。PEN-Fの狭くトリミングされた世界では感じることができなかったM-Rokkor 28mmの持ち味が、フルサイズのα7R2では充分に味わうことができた。

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例05

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例06

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例09

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

絞りを開いたときの絵も悪くない。周辺が落ち込み像が乱れ、ピントの合った部分とのコントラストがとてもいい。自動的に処理されるjpgではなく、raw現像で丁寧に仕上げていけば、40年近く前のレンズだと忘れてしまうほど、見事な描写を魅せてくれる。F値の開放近くではファインダーの表示を拡大してじっくりとピントを合わせる楽しみがありがあり、F値を絞った時には力を抜いてパンフォーカスで風景を切り取る楽しみがある。他のレンズも持って海岸に出かけたが、気がつけば28mmばかり使って撮影を楽しんでいた。

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例07

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

価値を感じることができず放置して触れずにいたものが、ある日突然とんでもなく愛おしいものに変化する瞬間がある。遠くにあって探していたものが、実は足元に転がっていた。灯台下暗し。そういう気付きは大歓迎だ。多くの人が無意識に抱く「幸せは遠くにある」という錯覚と同じく、新しいものを持っていないもので補おうとするのは人の性だろうか。しかし本当は、現在持っているもの、現在いる場所、現在の状況に答えはある。売り払ってしまおうと思っていた広角レンズM-Rokkor 28mmは、手放さないで本当によかった。晴れの日も曇りの日も、ファインダーを覗けば僕の視野を心地よく広げてくれる。

MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例10

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

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