ズミタクマクロ

2020.06.24PHOTOGRAPH and WOLF

オールドレンズでマクロ撮影:01

OLYMPUS PEN-F / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

だから何だ、という考え方が好きだ。この世界には法律やモラルで定義されたルールの他に、何となく慣習的に「そういうこと」になってしまった常識がある。その多くは大した意味を持たず、掘り下げてみるとがっかりするほど情けない理由で成り立っている。空は青い絵の具で塗りましょうとか、1日3食きっちり食べましょうとか、女は大人になったら可愛いブラジャーをつけましょうとか、無宗教だけど日本人ならお寺の墓に入りましょうとか、料理の下味は基本的に塩胡椒とか、そんな類のことだ。世の中に無数にある「そういうもんだ」と思い込んでしまったものを、だから何だと蹴り飛ばしてみると、隠れていた真実が見えてくることがある。

小さいものに迫って撮るマクロ撮影は、肉眼では味わえないミクロの世界が楽しめる撮影方法だ。マクロレンズを持っていないとマクロ撮影はできないと思っている人もいるかもしれないが、マクロレンズを使わなくても小さなものを大きく撮ることはできる。例えば撮影最短距離が70cmという寄れない代表のライカMマウントレンズを使っても、接写リングやクローズアップレンズを使うことでマクロ撮影ができるようになる。(参照:近くに寄りたい欲求)ただし、フルサイズセンサーのカメラの場合センサーの画角が広いので、小さいものを大きく撮るためにはより近づいて撮る必要がある。そして近づけば近づくほど被写界深度は浅くなり、ピントコントロールが難しくなる。ピントが浅いのはそれはそれで結構だが、意図しない絵になってしまうのは困りものだ。そんなとき、いい仕事をしてくれるのがマイクロフォーサーズのカメラだ。マイクロフォーサーズセンサーはフルサイズの半分つまり画角も半分で、フルサイズで撮るときよりも離れた位置から同じ画角を得ることができる。つまりピントの深度を深くできるのだ。深く、と言ってもそれなりに寄って撮るので僅かな違いになる。それでも三脚を使わずに反射神経で撮るマクロ撮影では、僅かな違いでも結構大きい。

takumar55mm/summicron50mm

お気に入りのオールドレンズをヘリコイド付アダプターを使ってPEN-Fにつける。ペンとペンタックスのスーパータクマー55mm、略して「ペンタク」。ペンとライカの沈胴ズミクロン50mm、略して「ペンズミ」。ペンタクとペンズミ、この2つの組み合わせでマクロ撮影を。

タクマーは精緻ではあるがコントラストが低い。だがコントラストは現像で調整できる。タクマーの最短は45cmで、ヘリコイド付アダプターと合わせれば「ペンタク」は結構寄れることになる。沈胴ズミクロンの最短は1mで「ペンズミ」はあまり寄れないように思えるが、レンズとアダプターの間に接写リングを挟めばペンズミでも物足らなさ感じなかった。グリップのないシンプルなPEN-Fには沈胴ズミクロンがよく似合う。スタイリングはペンズミの方が好みだ。PEN-Fの上部にあるモードダイヤルや補正ダイヤルは一切使わないのでカッティングシートで存在を消している。タクマーはゼブラ模様にし、沈胴ズミクロンにはフィルター径を調整するためのステップアップリングをフード代わりに使うという、何とも不思議な仕様にしてしまう。

オールドレンズでマクロ撮影:02

OLYMPUS PEN-F / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

オールドレンズでマクロ撮影:03

OLYMPUS PEN-F / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

オールドレンズでマクロ撮影:04

OLYMPUS PEN-F / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

オールドレンズでマクロ撮影:05

OLYMPUS PEN-F / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

オールドレンズでマクロ撮影:06

OLYMPUS PEN-F / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

オールドレンズでマクロ撮影:07

OLYMPUS PEN-F / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

指先ほどの小さな世界では、非日常的なファンタジーが広がっている。フルサイズよりもマイクロフォーサーズの方がピントコントロールがしやすい、と言ってもやはりそこはミクロの世界。吹いている風はもちろんのこと、撮っている本人の揺れでピント位置が一瞬で変わってしまう。小さい被写体を狙ってファインダーを凝視していると、止めているはずの体がゆらゆらと動くのがわかる。あれ?もしかして病気なのかな?と疑ってしまうほど、体が前後にゆらゆらと動く。ジジイの体幹が貧弱なのか、そもそも人は常にゆらゆらとしているのか。理由はとにかく、そのゆらゆらの最中ピントが来た一瞬に反応してシャッターを切るのである。

オールドレンズでマクロ撮影:08

OLYMPUS PEN-F / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

オールドレンズでマクロ撮影:09

OLYMPUS PEN-F / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

オールドレンズでマクロ撮影:10

OLYMPUS PEN-F / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

オールドレンズでマクロ撮影:11

OLYMPUS PEN-F / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

オールドレンズでマクロ撮影:12

OLYMPUS PEN-F / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

オールドレンズでマクロ撮影:13

OLYMPUS PEN-F / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

オールドレンズでマクロ撮影:14

OLYMPUS PEN-F / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

ペンタクとペンズミで撮るマクロ撮影は、予想以上に楽しい。特にペンズミは、ルックスも操作感も撮れる絵も気に入り、自分の中でマクロの定番になりそうだ。本来マクロ撮影と言えば、90mmのレンズやオートフォーカスのマクロレンズで撮影するのが一般的かもしれない。淀みなく精緻な描写が欲しかったら新しいレンズを使った方が賢明だろう。しかしひねくれた大人は、今日も言ってしまう。「だから何だというのだ」。

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