流すか止めるか
2020.01.22PHOTOGRAPH and WOLF三脚がないと撮れない写真がある。その1つに長時間露光撮影があり、水や雲を「流す」時に三脚が役に立つ。そういう写真を撮るつもりではなく、ふいに露光時間を長くして撮りたい場面に遭遇し「持ってきておけばよかった」と思うことが何回かあったので、今日はひょっとすると三脚の出番があるかもよ、とお告げがあるときにはバッグに三脚を入れることにしている。張り切った重い三脚を持って出かけて1回も使うタイミングがなかったりするとダメージが大きいので、使うかどうかわからないときの三脚は軽くて小さくて安いやつで充分だ。
海でも撮るか、川でも撮るか、そういう日は三脚を持っていくことになる。NDフィルターはND-1000のみ。目の前の景色を前にして構図を決め、三脚を立てて露出を設定する。タイマーでシャッターを切って静かに待つ。水や雲の流れ方がイメージ通りなら終了、イメージと違っていればISOや秒数を変えて撮り直す。撮り終わったら三脚をしまって、手持ちで何枚か撮ることが多い。そこで、あれ?あれ?っとなるのが、時間をかけて三脚で撮ったものよりも、ササッとと手持ちで撮ったものの方が思いのほかぐっとくる写真になるケースだ。もちろん主観的なジャッジではあるものの、瞬発力で撮ったものは侮れない。
計算してじっくり撮る三脚スタイルか、反射神経で撮る手持ちスタイルか。水や雲を流した絵にするか、動きを止めた絵にするか。時間が限られていると少々迷ってしまう。うーん、どっちにしようかな、と煙草に火をつけたりしていたら、せっかくの光の加減がどこかへ去ってしまうことに。手持ちで撮る場合には、ざわついた水面もなかなか絵になるので、三脚の場合とはアングルも違ってくる。うーん、どっちにしようかな。夜も眠れないほど深刻な悩みを抱えた人からすれば、そんなもんどっちでもいいじゃねえか、また違う日にでも撮りに行けばいいじゃねえか、いっそ撮らなきゃいいじゃねえか、ということになるのだろうが、当人としてはまぁまぁ真剣である。
2択の選択を迫られるとき、できれば「どっちを選んでもうまくいきそうだ」と思える状況がいい。一方が成功で一方が失敗だと考えた途端、どんな些細な選択も苦しい時間になってしまう。どっちを選んでもいい結果がありそうだけど、今回はこっちにしてみようかな。そういう風に悩む時間は、幸せな時間だと思う。どっちを選んでもうまくいく。そう思えるには、前向きな思考とちょっとした実力が必要だ。そこそこの難問もねじ伏せて、悪条件を好条件に転換できる力があれば、選択の苦痛は軽減される。簡単に言えばそういうことだが、そういう実力は簡単には手に入らない。
このページの撮影機材

SONY
α7S(ILCE-7S)

SONY
α7R2(ILCE-7RM2)

MINOLTA
M-Rokkor 28mm F2.8

MINOLTA
M-Rokkor 40mm F2

Hawks Factory
Adapter
column
- 2021.01.18写真の中のハーモニー
- 2020.12.24遠くへ
- 2020.12.11モノクロの世界と15mm
- 2020.11.06現像の愉しみ
- 2020.10.15ずっと使えそうなカメラ SONY α7S
- 2020.09.21写スンです GIZMON 17mm
- 2020.09.01矛盾ハンター
- 2020.07.29朽ちていくもの
- 2020.07.23花とペンズミ中毒
- 2020.07.15無駄に思えるプロセスは報われる
- 2020.06.24ズミタクマクロ
- 2020.06.19森へ
- 2020.05.25大人の夜の快楽
- 2020.05.04見直しと修正の日々
- 2020.04.13AM5:00の光と濃厚接触
- 2020.03.24何だってよくない人のPEN-F
- 2020.03.05濃紺への憧れ
- 2020.02.20NOKTON Classic 35mmとの再会
- 2020.02.15写真に写るのは事実か虚構か
- 2020.01.22流すか止めるか
- 2020.01.17ローコントラストの心情
- 2019.12.19後悔と懺悔の生きもの
- 2019.12.10飽きないものはない
- 2019.11.15小さな巨人 X100F
- 2019.10.24F8のキャパシティ
- 2019.10.05愛せる欠点とM-Rokkor40mm
- 2019.09.23植物採集の日々
- 2019.09.0263歳のキヤノン50mm
- 2019.08.22それは いい写真か悪い写真か
- 2019.08.14近くから遠くへ
- 2019.07.29雨を愛せる人になりたい
- 2019.07.081度しか味わえないその時間
- 2019.06.2465年前の古くないデザイン 1stズミクロン
- 2019.06.12街のデザインとスナップ写真
- 2019.05.15空の青 思い描く青空
- 2019.05.03近くに寄りたい欲求
- 2019.04.24変わらないフォーマット
- 2019.04.13常識と非常識の選択
- 2019.04.03ノーファインダーの快楽
- 2019.03.21ライカのデザイン
- 2019.02.26飽きないものの価値
- 2019.01.30NOKTON Classic 35mm
- 2019.01.17光と影のロジック
- 2019.01.01終わりに思う 始まりに思う
- 2018.12.17Takumarという名の友人
- 2018.12.06普通コンプレックス
- 2018.11.30季節を愛でる暮らし
- 2018.11.27失敗しない安全な道
- 2018.11.09終わりのない旅
- 2018.11.01M-Rokkor 28mmの底力
- 2018.10.19M-Rokkor 28mmの逆襲
- 2018.10.05焦点と非焦点
- 2018.09.26夜の撮影 α7R2 vs PEN-F
- 2018.09.18いま住んでいる場所が終の棲家になる
- 2018.09.10強烈な陽射しと夏のハラスメント
- 2018.08.30現役とリタイアの分岐点
- 2018.08.21過去との距離感
- 2018.07.10本来の姿とそこから見える景色
- 2018.06.16花の誘惑 無口な美人
- 2018.05.15欲望の建築とジェラシー
- 2018.04.14朝にしかないもの
- 2018.03.28過去の自分を裏切って何が悪い
- 2018.03.18夫婦とか家族とか
- 2018.03.01固定概念から自由になるための礎
- 2018.02.15ディテールを殺した写真
- 2018.02.07劣化することは悪いことだろうか?
- 2018.02.03マイクロフォーサーズの魅力
- 2017.12.27日本人は写真が好きな人種だと思う
lens
- MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8
- MINOLTA M-Rokkor 40mm F2
- PENTAX Super Takumar 55mm F1.8
- PENTAX SMC Takumar 200mm F4
- Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ MC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 E-mount
- Voigtlander NOKTON Classic 40mm F1.4 SC
- CANON 50mm F1.8 Ⅱ
- CANON 100mm F3.5 Ⅱ
- LEICA Summicron 50mm F2.0 1st Collapsible
- ZEISS Planar T*2/50 ZM
- GIZMON Wtulens 17mm F16
- OLYMPUS M.ZUIKO 12mm F2.0
- OLYMPUS M.ZUIKO 25mm F1.8
- OLYMPUS M.ZUIKO 40-150mm F4.0-5.6R
- All Photograph