固定概念から自由になるための礎

2018.03.01PHOTOGRAPH and WOLF

PEN-F 作例:スカイツリー

OLYMPUS PEN-F / M.ZUIKO 25mm F1.8

オリンパスPEN-Fと組み合わせる気持ちのいい相棒を探していくつかのレンズを買い、使ってみては期待と違っていて手放した。M.Zuiko(オリンパス)の重いプロレンズを試したり、パナソニックを試したり、マウントの違うレンズを試したり。買った後、手放してきたレンズには共通点があって、やたらと重くて楽しくなかったこと、明るいレンズなのに開放で撮影したものが粗悪なため開放で撮る気になれなかったことだ。あくまで主観的な手応えだが、すべての物事は客観的な評価よりも主観的な物差しの方が勝ることは言うまでもない。買う前に散々調べて何度も試写して買ったレンズも、フィーリングが合わないと感じた瞬間に無価値な鉄クズになる。

オールドレンズと呼ばれるものも、どうやら僕には合わない。不自然に滲んたエッジやパープルフリンジを古いレンズの味だとする愛好家の気持ちは、僕にはどうも理解出来ない。アナログにしかない味、というのも実はデジタルで実現可能で、もちろんカメラとレンズだけで写真を仕上げる人たちには無理だが、撮ったものを元に自分なりの意図を加えて1枚の写真に仕上げるのが当たり前の人にとって、カメラやレンズは写真のすべてではない。古いレンズじゃないと表現できないという写真もない。思い起こせはフィルムで写真を撮っていた時代にも、一流と呼ばれる人たちが印刷の原稿としてデザイナーに渡す写真は全部プリントだった。撮影したフィルムを元に、フォトグラファーのイメージ通りにプリントしてくれるプリンターという名の職業の人もいた。いまでは現像のプロセスはデジタルになって、カメラメーカーの色再現に依存することなく、自分の持ち味を写真で表現することができる。

画像調整サンプル

OLYMPUS OM-D E-M10 Mark II / M.ZUIKO 40-150mm F4.0-5.6R

しっかりとしたベースがあった上で、それを少し崩して表現することが好きだ。何の技術もなく生まれたものは稚拙だし、少しくらい遊びがないとつまらない。そういう人間には、撮影時には淀みなくキッチリと撮れて、raw現像で少し変化を加えてる、という流れが望ましい。どうせ手を加えるんだから、きれいに撮れている必要はないんじゃないの?そんな声が聞こえてそうだが、そうではない。いくつかの基準をきちんとクリアしているからこそ、raw現像やレタッチがうまくいくのだ。ふにゃっとした写真を元に手を加えていくのは、やはり限界がある。

その手の話は写真以外のことでも同じだと思う。デザインも料理も家電も子育てもスポーツも、昔から続いてきたトラディショナルな論理や技術をある程度身につけた上で、それをベースにしつつ自分なりに発展させていった方がうまくいく。基礎をつくる学習や作業は、地味で楽しくない。しんどくて途中で投げ出してしまう人も多い。しかし、しっかりとした礎があれば、その先に進むことができる。カメラやレンズは固定概念から自由になるための礎だ。個性などなくてもしっかりと被写体を捉えることのできるベーシックなレンズを使って撮影すれば、現像で自分の思い描く自由な世界にトリップできる。

OM-D E-M10 Mark II 作例:赤レンガ倉庫

OLYMPUS OM-D E-M10 Mark II / M.ZUIKO 25mm F1.8

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