ノーファインダーの快楽
2019.04.03PHOTOGRAPH and WOLF数年前から坊主頭にしている。それまで、せっせせっせと毎朝髪を濡らし整髪料をつけ…というルーティーンに縛られていたが、ある日「髪なんてなくても困らない」ということに気づいて坊主頭にした。このヘアスタイルなら来たるべき日がやってきて頭が禿げ上がってしまっても、現在とあまり変わりがない。そして何よりも日々の煩わしさが消滅し、ヘアサロンを予約する面倒ともサヨナラすることができた。髪型を放棄してみると、世界が違って見えるほど気分がいい。
LEICA M Typ240を使い始めて、自分の中で色々と面白い現象が置きている。良くも悪くも高性能を追求したデジタルカメラではないので、国産のフラッグシップモデルならできることが、LEICA M Typ240ではできなかったり難しかったりするようで、柔軟な付き合い方が求められる。特にレンジファインダーは、他のカメラと同じ考え方ではまともに付き合えない性格を持っていると思う。例えばピント。α7R2でマニュアルレンズを使うときより神経を集中して、能動的にピントを合わせにいかないと厳密にピントは合わない。トリミングについてもブライトフレーム外の対象やレンズの干渉があってなかなか難しい。他のデジタルカメラに慣れてしまった頭を少しほぐしてやる必要がありそうだ。動画は撮らない、至近距離は撮らない、逆光やハイキーでのディテールは期待しない、細かいトリミングは現像時に、レンジファインダーでうまくピントがつかめないときには迷わず外付けファインダーを使う、といった感じだ。そんな風に撮り方を切り替えていく中で、ファインダーや液晶を見ないで撮るノーファインダー撮影が結構楽しいことに気づいた。
マニュアルレンズで予め撮影距離を決めておいて、被写体までの距離を目測で詰めて撮る。ファインダーで確認しないでピントなんか合うのかよ、と言われそうだが、これが思いのほかピントが合う。パンフォーカスではなくF値2.8あたりでバチッと決まると気持ちいい。もちろん、ピントが外れることもある。感覚としては、テクノロジーではなく「撮る!」という思い、もしくは願い、あるいは魂の叫びで撮る感じ。声には出さないが、心の中で「ぬぅお〜ピント合え〜」と叫びながらシャッターを切る。まさにカメラと体が一体化する瞬間だと言える。やり始めると楽しくて、愛犬の散歩中にローアングルで撮り続けた。
ライカMがオートフォーカスで、レンジファインダーではなく高精細なデジタルファインダーだったなら、ノーファインダーで撮ろうとは思わなかったかもしれない。しかし何と言っても「ファインダー見なくても撮れんだ」というのは画期的だ。そういう固定概念のスイッチが起こると、このカメラじゃないととか、このレンズじゃないととか、逆光じゃないととか、ダイナミックレンジがどうのとか、そういったことは些細なことに思える。髪型を捨て去って坊主頭にした時も、同じような感覚を味わったことを思い出した。
このページの撮影機材
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lens
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- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ MC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 E-mount
- Voigtlander NOKTON Classic 40mm F1.4 SC
- CANON 50mm F1.8 Ⅱ
- CANON 100mm F3.5 Ⅱ
- LEICA Summicron 50mm F2.0 1st Collapsible
- ZEISS Planar T*2/50 ZM
- GIZMON Wtulens 17mm F16
- OLYMPUS M.ZUIKO 12mm F2.0
- OLYMPUS M.ZUIKO 25mm F1.8
- OLYMPUS M.ZUIKO 40-150mm F4.0-5.6R
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