飽きないものはない

2019.12.10PHOTOGRAPH and WOLF

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

光に向かってカメラを構えると、写真に光の輪が写る。逆光耐性の強いレンズだとこの現象はあまりない。開放値で現れるゴーストと呼ばれるこの現象を良しとしない人もいるが、僕にとってゴーストやフレアはむしろ歓迎すべきものだ。ライカMマウントのマニュアルレンズではM-Rokkor 40mmNOKTON Classic 35mmならレンズ内の反射によって現れる光の輪が楽しめる。今時のモダンなレンズならゴーストは出にくいと言われるが、FUJIFILM X100Fなら開放値でゴーストが出る。何でもかんでも、光の輪があればいいというわけじゃない。写しているものと光の輪をいい感じに共鳴させることができると「おおっ!」となるのである。初めて光の輪を見たときには、ちょっと感動した。

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

三脚とNDフィルターを使う長時間露光撮影もなかなか面白い。暗いところを明るく撮る場合にもスローシャッターを使うが、動くものを止めずに流す目的の長時間露光は、どの程度「流す」かで絵が決まってくる。シャッターが切り終わった後でもノイズリダクションの処理を同じ時間待つため、1枚撮るのにまあまあ時間がかかる。せっかちな人には向かない、やや根気のいる撮影方法だ。川や海の水が肉眼では味わえない表情になる、風景写真でお馴染みのソレである。風景を撮るのが好きな人ならおそらく1度は経験のある撮影方法で、ちまちま三脚なんか使って楽しいのか?と疑いながら撮ってみても、これが結構楽しい。水、雲、車のライト。この辺りが被写体の定番だと思うが、うまく使えば新しい作風に出会えるかもしれない。

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

オールドレンズや自分にあったカメラを見つけ、夢中になって写真を撮っていると色んな発見があって面白い。しかし、何度も何度も同じものを同じような撮り方で撮っているとさすがに飽きてくる。大好きな料理だって毎日食べ続ければ必ず飽きる。飽きる、というのは避けようのないことなのだ。100回でも飽きないもの、それはその人にとって価値のあるものだ。しかしどんなものでも、1,000回、10,000回と数を重ねていけば、やはりいつかは飽きてしまう。もちろん、個々に持っている傾向、性格、DNAによって飽きるまでの道のりと時間は違う。しかしゴールは必ずやってきて、結局のところすべての物事はいずれ「飽きる」のだ。飽きるのは決して悪いことではない。むしろ向上心の産物と言ってもいい。

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

側にいるだけでクラクラするほどの美女と結婚したっていつかは必ず飽きる。飽きることは悪いことではないが、何でもかんでも飽きてすぐにそれを放り出してしまう暮らしでは、残念ながら人は幸せになれない。愛するものと長く上手に付き合っていくためには、少々努力と工夫が必要だ。写真にしたってそれは同じ。撮り方や撮るもの、撮る時間や現像方法を変えて違った角度から写真に向き合っていけば、もしかしたら死ぬまで飽きずに楽しんでいられるかもしれない。

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