濃紺への憧れ

2020.03.05PHOTOGRAPH and WOLF

SONY α7S / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 II MC

気がつくと写真に青空が写っている。空を写そうと意識的に考えているわけじゃないが、シンプルな構図を狙うと自然と空を背景にしてしまうようだ。青空がドスンとある写真を撮ったときに、少々意識的に空色を補正する。浅い空色なら赤ではなく緑寄りに、濃いめの空なら濃紺に持っていく。(参照:空の青 思い描く青空)この補正は実際の空色とは関係なく自分の好きな色に持っていく作業で、ちょうど良い塩梅にするのがなかなか難しい。もちろん撮ったものによって、無補正のままでいいものもある。撮影も現像も明確な答えなどない。自分が求める結果を探しながら迷いながら取り組むその時間が、ゴールそのものだ。

SONY α7S / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 II MC

SONY α7S / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 II MC

SONY α7S / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 II MC

FUJIFILM X100F

空にいい雰囲気に雲があると、雲の造形もしっかりと描写した写真にしたい。遠くの雲のディテールを拾うには、F値を絞って撮ることになる。F値を絞れば輪郭がシャープになるが、明暗のコントラストは低くなりフラットな写真になる。少々フラットになった写真を立体感のあるものにするには、現像テクニックがモノを言う。絞って撮るのとは逆に、オールドレンズでは周辺減光という魅力的な効果があり、F値を開いて撮ると明るい中央部から濃い周辺部へと空にトーンをつけることができる。ただし、開いて撮ると画面周辺は霞んだり流れたりと描写が甘くなる。だから撮りたいもののメインが画面の端に来る構図にする場合は、必然的にF8以上に絞って撮ることになる。

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

6月に生まれて梅雨の湿度の不快感に大泣きしたせいか、僕はあまり湿度が好きじゃない。湿度は健康にもいいらしいが、湿気の多い写真を毎回撮っていたら何だか具合が悪くなりそうだ。濃い青空の写真は、湿度がなくカラッカラに乾いた空気感にしたい。紫外線たっぷりの激しい太陽光が地上を照らし10分でも外に立ってりゃ黒人になるぞ、くらいの空気感の写真が好きだ。なぜ好きなのかと聞かれてもうまく説明できない。もしかしたら、少年時代に焼きついてしまった外国への憧れかもしれない。ハリウッド映画やミュージシャンのポスターで、青空はいつもマッチョな「濃紺」だった気がする。砂漠に真っ直ぐ伸びるハイウェイ、深く濃い空。いいねぇ。そういう感じだ。

leica m + nokton classic 40mm 03

LEICA M Typ240 / Voigtlander NOKTON Classic 40mm F1.4 SC

countryside01 MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

countryside02 MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

10代の頃、熱心に聴いていたロックバンド「U2」が転機となったアルバム「The Joshua Tree」は、砂漠を旅しているような乾いたサウンドだった。ボノが歌う「逃れたい 名前のない場所へ」という歌詞も、どこか乾いている。「乾き」というのは潤いを求める渇望であり、潤いを求める旅を象徴している。俺の実力はまだまだこんなもんじゃねえぞ、という「ないものねだり」の「ハングリー精神」は、いい大人になって度を越すと大変ウザくてとっても迷惑で1人でやってろと言いたくなるものだが、何かに対する乾きはいつだって僕らの原動力となる。もちろん、いつまで経っても乾いてばかりじゃ、きっと寂しい人生だろう。乾いて潤って、乾いて潤って。そういうのが本当の健康というものではないだろうか。

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

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