時代遅れのロックンロール

2021.10.27PHOTOGRAPH and WOLF

SONY α7S / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

カメラをぶら下げてフラフラと撮り歩くとき、音楽を持ち歩くのが好きだ。使っていたipodを服と一緒に洗濯してしまってからしばらく音楽を聴かずにいたが、若い人のようにスマホを使って聴いてみたら予想以上に快適だった。本当はオペラやシャンソンといったこれまで触れることのなかった古い音楽を聴きたい気持ちはあるが、いかんせん音楽への探究心がヘッポコピーなので、結局スマホで持ち歩く音楽は大概自分が知っているものになる。つまり1970〜2000年あたりのヒットチャートだ。古めの音楽でもビートルズ、アバ、カーペンターズといった耳障りのいい音楽は、どうやら時代や世代を超えて好まれているようだ。日本の古い歌にも素晴らしい歌がたくさんあるが、日本語のオリジナルはどうしてもカビ臭さが鼻につくので、誰かしら今の人が歌い直したものの方が聴きやすい。聴きやすい、ということを無意識に選択しまうのは、何だかんだいって時代に流されているということだろうか。かつては熱心に聴いていたのに今では聴きにくくなってしまったものの1つに「ロックンロール」がある。

SONY α7S / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

SONY α7S / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

エアロスミス、モトリクルー、ローリングストーンズ、ボンジョヴィ。かつて巨大なマーケットと共に世界を圧倒したハードロックたち。中高生くらいの年齢で覚えた激しいビートの音楽だ。中学生の僕が当時暮らしていたのは全寮制の学校で、キリスト教の教えにより賛美歌とクラシック以外の音楽は禁止されていた。だから僕にとっての初ロックは、学校の先輩たちがこっそり隠し持っていたウォークマンとそこに取り付けた小さなスピーカーから流れる洋楽たちだった。それらは教師に見つかると没収されてしまうわけだが、僕らは懲りずにダビングしたテープを様々な場所に隠し持っておくのだ。中学生の頃に禁止されていた音楽は、高校に進学するとどういうわけか解禁になり、僕らは学生寮の狭い部屋でそれぞれに持っているラジカセを使って様々なロックを爆音で聴いた。その中で最もお気に入りだったのがガンズ・アンド・ローゼズだ。

SONY α7S / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

十字架にドクロという何とも不吉なジャケットのガンズ・アンド・ローゼズ。サウンドは「魔界の音楽」で歌ってる歌詞は理解できなかったが、とにかく不謹慎でヤバイ雰囲気がプンプン漂っていて16歳の少年をワクワクさせた。そう、1990年あたりの少年はまだ「強くて悪い人」に憧れていたのだ。「カワイイ」が最上位にいる現在とは違う。悪そうで強そうなものに、どうして憧れたんだろう?エッジが立っていてパワルフルなサウンドを追い風のように受けて、ロックを聴いているだけで強くなれるような気がしていた。どう聴いてもマトモじゃないボーカルの声、清潔感とは無縁の歪んだギター音、女の子が近くを通っただけで妊娠させられそうな雰囲気のバンドメンバーたち。暴力、金、猥褻、麻薬、そういうものがぐちゃぐちゃになりつつも社会に出せるギリキリの形にまとめられたんでアルバムにしてみました、という感じの音楽である。かつては世界をあっと言わせた音楽、そして今は時代遅れの音楽である。何せ耳障りのが悪い。

やかましい音楽は中年男にはキツイ。普段聞くことはないが、たまにはね…とアマゾンミュージックでダウンロードしたガンズ・アンド・ローゼズのアルバムを聴いてみる。すると、これがなかなかいいのである。もちろん少年の自分とは違う脳で聴いているので感じる良さはまったく違うが、耳障りのいい音楽にはないものが脳を刺激するのだ。写真を撮る気分も聴いている音楽で変わってくる。ロックを聴きながら「植物をマクロで」というのは合わない。自分でも理由はわからないが、ロックには広角レンズがよく合うと思う。広範囲に合うピント、世界を歪めるディストーション。画角というより広角レンズの特性が何となくロックに合っている気がする。魅力的な音楽は個性が強いため、ある意味BGMとして聴きやすいとは言い難い。いい意味でも悪い意味でも、見えるものすべてを変えてしまう強制力がある。そして、音楽に趣向性を引きずられながら写真を撮るのは楽しい。好きなものに引きずり回されてちょっとウザいなまったくしょうがねぇなまぁそんな日もあるさと思いながらも身を委ねる、こんな幸せな時間は他にあるだろうか。

SONY α7S / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

肯定や優しさや癒やしではなく、否定や強さや激しさを強調した音楽。そういうのは、やはり「時代遅れ」なのかもしれない。ファションは時代を経ても繰り返し、昭和時代の歌謡曲がリバイバルされても、ロックンロールが復活することはないかもしれない。しかしCDにしろmp3にしろモノが残っている限り何年経ってもそれを過去から引っ張り出して聴くことができる。音楽でも写真でも「カタチが残っている」ということはそういうことだ。