楽しい中望遠 APO-SKOPAR 90mm

2023.03.21PHOTOGRAPH and WOLF

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真01

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

同じ街で暮らし同じような毎日を繰り返して生きていると、これまで起こっていたことが今後もずっと続くのだろうと錯覚してしまう。しかし、本当はそうではない。実際には価値観も物質もじわじわと変化し続けているのだ。その変化はゆったりと流れる大きな運河のようで、景色は変わらなかったとしてもそこにある水は昨日の水ではない。そして、僕らは新しい何かを手に入れるたびに、持っていた何かを手放すことになる。

どちらかと言えば、望遠レンズよりも広角レンズの方が好きだ。レンズが広角になると世界が歪むことになるが、その「歪み」がたまらなく好きなのだ。だからと言って広角レンズばかりで写真を撮っているのではなく、用途によって単焦点レンズを使い分ける。妻と出かけたり犬の散歩のときには35mmの一択、写真を撮りに出かけるときには50mmの他に28mmや21mmの広角レンズをバッグに入れることが多い。1本だけ持っていた中望遠はオールドキヤノン100mmで、これもまぁいい雰囲気を出してくれるレンズではあるが、相当気が向かないと持ち歩くことはない。中望遠?どうかなぁ?まぁなくても生きていけるよね。というのが昨年までの考え方だった。中望遠レンズを避けてきた理由に「素直なボケ」というのがあって、どうもこれに物足りなさを感じてしまうのだ。しかし最近になって「あぁ、これは中望遠で撮ったらいい感じなのになぁ…」というシーンが何度かあって困った。中望遠があったらなぁ…の理由は画角と圧縮効果で、圧縮効果については標準レンズで撮ったものをトリミングしたとしても同じような絵は描けないのだ。うーん、それじゃあ試してみますか中望遠、ということで戯れてみたのがVoigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8である。写真で見ると太マッチョに思えるこのレンズは、実際に手に取ると結構小ぶりで重さも250gといい感じのコンパクトさだ。フードを付けずにM型ライカに付ければ50mmレンズを付けているくらいの佇まいである。さぁ、どーなんだ、と写真を撮りに出かける。

LEICA M11とAPO-SKOPAR 90mm F2.8

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

アポスコパー90mmはアポと名前がついてるだけあってフードを使わなくても安定した画質が得られそうだ。フードをつけるとどうしても機材が大きくなるので、最近はレンズの保護的な役割でフードではなくステップアップリングを付けている。どのレンズでもリングの径は49mmに統一しておいて、必要に応じクローズアップレンズやNDフィルターを取り付ける。中望遠どうなのよ?とあまり大きな期待をせずに撮っていると、あれあれ?マジすか?楽しいねと、あっという間に中望遠の楽しさに引き込まれていく自分に気づく。

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真02

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真03

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真04

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真05

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

使い慣れない90mmの画角の狭さに少々戸惑うかなと思っていたが、撮ってみるとそんなことはない。手ブレ補正がないLeica M11で撮るとファインダーの像は若干ゆらゆらするが、シャッタースピードをちゃんとコントロールしておけば手ブレの心配は無用だ。クローズアップレンズを使ってマクロで撮ったり、絞ったり開いたりしながら道具を目と脳に馴染ませていく。

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真06

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真07

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真08

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真09

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真10

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真11

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真12

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真13

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真13

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真14

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真15

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真16

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真17

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

アポスコパー90mmはなかなか楽しいレンズだと思った。ライカMマウントのレンズが欲しいとなるとコシナにお世話になることになる。「M型ライカを使ってるわけだからライカのレンズを使えばいいじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、可能な限り「国産」を買いたいのだ。自分のことを愛国者だとは思わない。だが、物価が高いとか不景気だとか税金を高くするなとか言いながら、輸入品を喜んで買いまくって国外に金を垂れ流す不届き者にはなりたくない。外貨を得て国内で消費する。つまり外からブンどってきて近所で買いものをしてこそ共同体が安定するのだ。これは人類が今の5倍くらい進化しないと変わらない常識である。Leica M11にしたって自分の要求を満たすカメラがこれ以外にないから使っているが、本当はフジフィルム、シグマ、コシナあたりでマニュアルレンズ専用の素晴らしいカメラを作ってくれたらすぐにでも乗り換えたいと思っている。

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真18

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真19

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

APO-SKOPAR 90mm F2.8で撮影した写真20

LEICA M11 / Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8

時々フィルムでも撮影しようかとNikon F2を買って、フィルムで撮るということがいい刺激になって写真のデジタル現像について見直しているところだ。デジタルカメラのデジデジ感を抑えるために、しばらく引き出しにしまってあったブラックミストフィルターを頻繁に使い出した。そういうタイミングと相まって、アポスコパー90mmで写真を撮るのがとても楽しい。現実のようで現実とは違う。そういう写真の世界がとても好きだ。

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