合うもの 合わないもの

2025.11.05PHOTOGRAPH and WOLF

FUJIFILM X-E4で撮影した写真01

FUJIFILM X-E4 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

いつだって正解はわからない。何がベストな選択なのかを僕らは必死に追い求めるが、求めれば求めるほど考えが混沌としてわからなくなるものである。ああでもあるし、こうでもある。正解とも思えるし、不正解のような気もする。なぜ、いつも明快な回答に辿り着けないのか。頭が少々悪いからか?優柔不断な性格だからか?酒ばかり飲んでるからか?最近人に優しくしてないからか?そうとも言えるが、往々にして考えごとの的が「結果」に向かっていることに原因がある。僕らの「結果」は現在ではなく未来にあって、どんなに頭を捻っても未来を知ることはできない。予想や想像で未来を推し量っても、たどり着く先は「わからない」になる。

FUJIFILM X-E4

最近一番よく使っているカメラはFUJIFILM X-E4だ。今年発売された後続機種X-E5は見た目も使いやすさもよさそうで、僕も発売を心待ちにしていた1人だが、いかんせんX-E4よりも少しだけ重くなった。X-E4が364g、X-E5が445gで、81g重くなった。たったそれだけ?と言われそうだが軽量大好き人間にとって81gの差は大きい。こんな言い方をすると怒られそうだが、APS-Cセンサーのカメラは所詮クロップセンサーだ。少しでも重くなるならフルサイズのカメラを使った方が幸せになれる。待望のEVF内蔵M型ライカ「LEICA M EV1」は484gと軽量で、X-E5にアダプターをつけたらフルサイズのM型ライカよりも重くなってしまうのだ。カメラやレンズの重さはまったく気にしない、という人もいるだろう。僕の場合は、持ち歩いているだけで疲れてしまわないサイズと重さは譲れない。

カメラとレンズの重さ比較

考えてみたらAPS-Cセンサーのカメラをちゃんと使うのは初めてだ。まず戸惑うのが画角で、マウントアダプターを使っていつものレンズを使おうとすると画角が全部1.5倍になってしまう。35mmレンズなら52.5mmの画角に、50mmレンズなら75mmの画角に、といった具合に世界が狭くなる。同じ画角を求めると被写体から離れないといけないので、頭に描いたボケ味が違ってくる。この辺は頭の切り替えが必要だ。フルサイズと比較するのではなく「こういうもんだ」と思い込ませて自分を騙す力技である。例えば35mmのレンズをつけて「これは50mmだ」と思い込む。何ならレンズに刻まれた「35mm」という刻印を隠してしまえばいい。この稚拙な作戦は結構うまくいって大好きなレンズVoigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4を50mmのように使いこなしている。中望遠や望遠はX-E4には不向きなので切り捨てるとして、問題は広角域だ。同じMマウントのレンズでVoigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5という頼りがいのあるスーパーレンズがあって、APS-Cセンサーでは22.5mmの広角になる。これはこれで素晴らしいマッチングだが、いかんせんフィルターがつけられないし、X-E4にはもう少し小ぶりなレンズを使いたい。富士フイルムのレンズには触手が伸びないがフォクトレンダーにはXマウントのレンズもあるので、NOKTON 23mm F1.2(35mm相当)やCOLOR-SKOPAR 18mm F2.8(28mm相当)あたりを使っていけば、X-E4のような小ぶりなカメラでフルサイズのように自在に撮影が楽しめる気がする。

FUJIFILM X-E4で撮影した写真02

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真03

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真04

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真05

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真06

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真07

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真08

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真09

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真10

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

オリンパス、ソニー、ニコン、ライカと色んなカメラを使ってきたが、結局「軽いカメラ」が自分に合っているとわかってきた。そんなこと、前々からわかっちゃいるが、色々試してみないと実感できないものである。試しに使ってみたCCDセンサーのコンデジ「LUMIX LX3」が予想を超えて楽しく撮れたのが、自分の「軽いカメラ」を好む嗜好性を裏付けている。軽量コンパクトな道具で、強くて重い写真を撮る。どうもそういうのが好きらしい。おのれの傾向や向き不向きを知るには、とにかく色々試して撮り続けるしかない。撮って撮って撮りまくれ。当たり前のことだが、機材を買って部屋に放置しているだけじゃいつまで経っても知り得ないものがある。自分を理解することはゴールではなく、何かに向かうすべてのことのスタート地点なのだ。

FUJIFILM X-E4で撮影した写真11

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真12

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真13

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

NOKTON Classic 35mm F1.4は、壊したり売ったりマウント変えたりと何度も購入したお気に入りのレンズだ。同じ35mmでULTRON Vintage Line 35mm F2ばかり使っていた時期もあったが、何だかんだ言って結局NOKTON Classic 35mmに戻ってくる。このサイトにはアマゾンのリンクを貼っているので、僕の紹介で何本も売れているレンズだ。NOKTON Classic 35mmはフルサイズ用のレンズだが、X-E4との組み合わせも悪くない。解放ではなくF1.7やF2あたりの絞りでも結構ピントが浅いので、APS-Cセンサーでクロップされても50mmレンズのように使える。もちろん絞れば超シャープだ。あまりにもシャープなので絞ったときの線の細いシャープさを嫌う人もいるらしい。ULTRON 35mmの方がややマイルドで、このマイルドさを楽しみたいならフルサイズで使うのを薦めたい。甲乙をつけられない、どちらもお気に入りのレンズだ。

X-E4のサイズ感と撮影のオペレーションは肌に合う。このカメラではおそらく動画を録らない。最低限のダイヤルと設定で露出が合わせやすい。レンズはもちろんマニュアルフォーカス。カメラのグリップが苦手な僕にとって、グリップのないシンプルなデザインは快適だ。ボディの右手がかかる部分に滑り止めのラバーを貼ったが、カメラは基本左手で持って右手には力を入れない持ち方なのでグリップは不要だ。メカニカルシャッターでストロボが使える。ストロボを使うとき以外は電子シャッターを使っていて、どういうわけか蛍光灯のある室内でシャッタースピードを1/100にしなくてもフリッカーがでない。APS-Cセンサーだとフリッカーが出にくいのか、理由はよくわからないが嬉しい誤算だ。APS-Cなのでフルサイズと比べると画質があっさりした感じかな、とも思ったが結局センサーどうのこうのよりも自分の現像の方が重要だ。色々考えると今の僕にこの上なくマッチするカメラのような気がする。自分に合うカメラで写真を撮るのは抜群に気持ちがいい。

FUJIFILM X-E4で撮影した写真14

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真15

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

FUJIFILM X-E4で撮影した写真16

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ

何が正解か、を考えると答えは出にくい。困ったことに歳を重ねて知識や見解が増すと、答えはもっと出にくくなる。なぜ迷うのか?それは、来月どうだとか3年後はどうだとか、未来の結果に気持ちが向いているからだ。自分に合っているもの、合っていないものを考えるとき、僕らはもう少し過去と現在の自分に目を向けてみるべきだろう。3年間こんな感じで写真を撮ったけどこういう思いを抱いたとか、昨年撮影したときにもっとこういうカメラだといいなと思ったとか、自分の過去を紐解くと今の自分に何が合うのかがわかってくる。もちろん、未来への願望が決定を促す大きな要素であるのは間違いないが、過去のように確定された事実が選択を導いてくれるのも真実である。カメラを買っても写真を撮らなければ「過去」がないに等しい。撮って、撮って、考えて、また撮って。不毛に思えるその蓄積が、まだ見ぬ未来に「尊い過去」となる。自分に合うものを見つけられる人は、過去を持つ人の特権だと思う。

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