敵はいつもそこにいる

2026.01.19PHOTOGRAPH and WOLF

SONY α7CII / Nikon Ai Nikkor 200mm F4

何もかもうまくいかなかった。昨年、2025年はそんな1年だった。例年通り写真撮影を満喫したし喜ばしい出来事も無数にあったので「何もかも」ではなく「アレもコレも」と言い換えた方がいいのかもしれないが、人生うまくいくことばかりではない。そんなことはわかっちゃいるが、些細なことから冷や汗をかくことまで次から次へと立て続けにうまくいかないと、さすがに「いったいどうなってんのよ?」と天に向かってボヤきたくなる。ある国の人たちは物事がうまくいかないとき「社会のせい」「他人のせい」にする傾向があるようで、うまくいかない原因を自分以外の何かにすることで気持ちを楽にしているように思える。逆に我々日本人は良くも悪くも「自責」という精神性があるため、うまくいかないのはきっと自分のせいだと考える傾向がある。何かにつけ人のせいにする生き方はどうかと思うが、ちょっと向かい風に煽られただけでクヨクヨメソメソするメンタルも困りものだ。楽しいことを楽しいと思える自分でいるためには、我々はある程度図太く心が強くないといけない。

SONY α7CII / Nikon Ai Nikkor 200mm F4

SONY α7CII / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

昨年末に仲のいいプランナーと久々に会ってランチを食べ、近況を報告した。互いに歳をとって劇的に変わった部分もあれば、相変わらず変わらない部分もある。僕自身は、ようやくNISAを始めたような株とか通貨の取引についてはほとんどわかっていない人間だが、彼が以前から動かしてきたFXの話になって面白いことを言った。それは「結局は自分との戦いだ」ということ。通貨や金融の取引は上がったり下がったりする「比較」で金を稼ぐゲームだ。つまり自分以外の要因が結果に強く影響する。そんな仕組みの中でも「結局は自分との戦いだ」という捉え方に激しく同意した。金融取引に限らず、何についても最後に辿り着くのはそこである。敵はいつだって自分なのだ。

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

SONY α7CII / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

写真撮りなら誰しも経験するのが「比較」という呪縛だ。誰かの写真と自分の写真との比較、カメラやレンズをはじめとした機材の比較。これらを経験しない人は、まずいないだろう。機材の比較については、脳を使わなくても金を使えば果てしない沼にハマることができるので、小金を持て余したオジサンたちが自分らしい写真を撮ることよりも性能や個性を比較するためにせっせと機材を買い集めることになる。それが悪いと言っているわけじゃないが、機材の比較はあくまで序章であって楽しい本編はもっと先にある。比較だけで終わってしまうのは、もったいない気がするのだ。事実確認とか検証は流行りのAIに任せて、自身のイメージを形にするクリエイティブで楽しい世界、つまり写真撮りの本編を存分に楽しみたい。ただしそれはちょっと脳を使う。しかも、思い通りにいかなかったり、試行錯誤した割にパッとしない写真になってしまうこともある。そして少々面倒だ。何が面倒かって、うーんうーんと唸りながら自分にとっての答えを導き出さないといけないからだ。しかも数学のように明快な答えなど存在しない。

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5
Panasonic LUMIX LX3

Panasonic LUMIX LX3

RICOH GX200

RICOH GX200

RICOH GX200

RICOH GX200

当たり前だが考える人と考えない人では差が開く。何かに夢中になって生きてきた人とヘラヘラしているうちに歳をとってしまった人が「まるで違う」のと同じように、考え続けて写真を撮ってきた場合と何となくシャッターを切ってきた場合では、撮れる写真が違ってくる。頭の回転が速い人なら2分も考えたら済むことも、くだらない一般常識でガチガチに脳が固くなってしまった年寄の場合、丁寧に時間をかけて考えないと思考の迷宮に迷い込むことになる。誰でもできる簡単なこと以外はやりたくないという若者も同じだ。あぁ、面倒くさいなぁ、難しいことは考えたくないなぁ、という悪魔の囁きに気持ちよく身を委ねたら、手を伸ばせばすぐに手に入るものすら遠い国のおとぎ話になってしまう。そう、誰が一番厄介かって、それは間違いなく自分自身なのだ。

SONY α7CII / Nikon Ai Nikkor 200mm F4

SONY α7CII / Nikon Ai Nikkor 200mm F4

昨年はCCDセンサーの古いコンデジを使って、あれ?色々使ってきたけどコレが一番いいんじゃない?100万円超えのライカは必要なかったね、という嬉しい脳内革命が勃発した。さらに言えば、すっきりして薄味で自然な感じの写真はもう撮っても楽しくないね、という心境にもなった。記念写真みたいなのばかり撮ってたらワッペン集めてるコレクターと一緒じゃない?そう自分が自分に問いかける。確かにその通りだ。お前の言ってることは間違っていない。だが、改めて自分の撮った写真を見返してみると、見事に言ってることとやってることが違う問題が滲み出ている。やれやれ。闘うべき敵は何食わぬ顔をしていつもそこにいる。

写真集販売PHOTOBOOK WOLF