消えたCCD GX200とD3000
2026.02.10PHOTOGRAPH and WOLF昨年オールドコンデジのPanasonic LUMIX LX3を買って、ちょいちょい使ってきた。子供のおもちゃみたいに小さなカメラで、何の役にも立たないガラクタのように思えるルックスだが、使う度に「いいもの買った」と思えた。現在主流のCMOSセンサーではなく、いまは消滅してしまったCCDセンサーのコンパクトデジタルカメラである。はっきり言って万能ではないし、現行のカメラと比べて何もかも見劣りする代物ではある。晴天下に背面液晶で撮るのは不便だし、どう考えても撮影操作が気持ちいいカメラではない。だが使えば使うほど、もっと撮りたくなる不思議な魅力があった。これに味をしめてもう1つ手に入れたオールドコンデジがRICOH GX200だ。これまた古いカメラで2008年発売の1/1.7型CCDセンサーを持つコンデジである。
何故このカメラを買ったかと言えば、広角24mmスタートのズームで外付けファインダーがつけられるCCDセンサーのコンデジだからだ。アスペクト比を4:3にすれば約1210万画素と昔のカメラにしては解像度もそこそこある。ファインダーをつけたらLX3よりも使い勝手がいいのでは、と期待した。ところが手元に届いて触ってみると、外付けファインダーは低画素過ぎてまるで夢を見ているかのような画質で、ジージー音を立てるフォーカスは亀の歩行のように遅く、歪曲収差はひどく、RAWで撮ると不要なJPGも同時記録され、しかもRAWデータが古い規格だからかプロファイルをまったく適用できなかった。実際に手にしてみないとわからない現実である。素直に持っているLX3を使った方が幸せになれると判断してすぐにメルカリに出品した。それが昨年の夏のことだ。ところが出品したGX200はまったく売れず、そんなに使い手がいないなら気を取り直して自分で使ってみますか、と使い出した。そして見事にハマったのである。
ビジネスでもボツにした企画が結構よかったということがある。ずっと着ることもなくタンスで眠っていた服を着てみたらお気に入りの服になってしまったということもある。そんな感じでGX200が僕の手に馴染むことを知った。GX200は、いま大人気のGRと見た目は似ているが、約200gとかなり軽量で昔のカメラらしくチープに仕上がっている。LX3との違いは結構ある。ざっくり言うと、いい点は持ちやすく操作しやすいこと、悪い点は動作の遅さと画質のゆるさだ。LX3はいかんせん小さすぎて何度か地面を転がしてヒヤヒヤしたことがあるので、ラバーのグリップがあるGX200の方が安心して持ち出せる。どちらにせよ、古いデジタル機器なので、心のどこかでいつ壊れても不思議ではないと思いながら付き合うことが大切だ。落っことしたらあっけなく壊れてしまうのは、人の体や信念と同じである。
CCDセンサーで撮った写真は、色乗りがいいとかフィルムライクだとかそういう評価をよく見かける。確かに色の密度が濃い印象があるし、古い描写という点ではフィルムライクなのかもしれないが、自分でちゃんと現像しないと雰囲気のある写真にならないのはCMOSセンサーの場合と同じだ。デジタルライカのような特殊なカメラを除いて、現行のCMOSセンサーはできるだけ精緻に、できるだけ欠点をなくそうと発達してきた。CCDセンサーはそれ以前の規格として現行のセンサーにはない欠点が多い。CMOSセンサーは消費電力の効率もよく、生産効率もいいと聞く。CMOSセンサーは改善後、CCDセンサーは改善前というわけだ。欠点の多い馬鹿野郎をよしとするか、バランスのとれた優等生をよしとするか、どちらにせよ「いい」「悪い」ではなく好みや気分の問題だ。しかもCCDセンサーで撮ったからと言って、塩味が醤油味に変わるわけじゃない。塩味がちょっと違う塩味になるだけだ。
小さなコンデジの背面液晶で写真を撮る佇まいはスマホで撮っているのと変わらないスタイルになる。老眼ジジイは目から30cm以上離さないと画面に何が写っているのかよくわからないので、手を前方に伸ばして撮る格好になる。ハッキリ言って「撮ってる」感のないスタイルである。ISOが上がりすぎずシャッタースピードが遅すぎないように、液晶に表示される数値を確認するものの文字が見にくいのなんのって、高精細なスマホの極小文字がハッキリ視認できるのと対極にあるデジタル世界なのだ。写るもののディテールを楽しみながら撮るファインダーを使った撮影に比べて背面液晶を使った撮影は、撮影自体の楽しさは半減する。僕のようにマニュアルレンズを使ってきた写真撮りの場合、半減どころか1/3くらいになると言ってもいいだろう。それでもCCDで撮ったRAWを自分好みに現像する楽しさを知って、それを何回か繰り返すうちに撮影自体も楽しくなってくる。液晶で見えているものと現像して完成する写真は別物という感覚は、M型ライカのレンジファインダーで撮るのと少し似ている気がする。
デジタルカメラにつきまとう厄介事の1つに「センサーダスト」がある。センサーに微細な埃がついて写真に写り込む本当に鬱陶しいアレである。絞り開放だけで撮る人には関係のない話だが、F8近くに絞り込んで撮るのが通常運転の人にとってセンサーゴミは常につきまとう悩みの種なのだ。コンデジの場合、写真に写り込んだゴミを発見しても、レンズ一体型なのでカメラを分解でもしないとセンサークリーニングができない。それが難点だ。僕のGX200も例外ではなくハードな現像をするとセンサーダストが気になった。オールドで荒っぽい画質が好きなくせに、ゴミがついているのは許せない。犬のウンチがついた服は着れないというのと同じで、ゴミが写った写真を許せないのは清潔な環境で長く生きてきた代償のようなもので、お前の顔だってゴミがついているような顔だよと言われたらそれまでだが、許せないものは許せないのである。そこであまり気乗りはしないがセンサーをクリーニングできるレンズ交換式でも使ってみるか。CCDセンサーで調度いい一眼レフはないかな?そう思って使い出したのがNikon D3000だ。
Nikon D3000のセンサーはAPS-Cの1,020万画素CCD。エントリー機らしくチープな佇まいだが、同時代のカメラの中では抜群に軽い。センサーゴミを嫌って手にしたのは、1万円ほどで買えるゴミのようなカメラだった。このチープなカメラと換算27〜82.5mmの安いキットレンズ、既に持っている55mm、200mmを組み合わせて写真を撮る。
センサーサイズが1型以下からAPS-Cに変わっただけで、結構写真は変わってくる。コンデジよりも描写が繊細になって、現像で意図的に粒子を入れなければ現行カメラと比べても遜色ないレベルだと言える。何もかも物の値段が上がっている今日この頃、僅か1万円ほどでこんな機材が転がっているんだからある意味幸せな時代だ。LX3とGX200ではわずかだが描写が違っていた。APS-Cのニコンになるとコンデジのヤンチャさはなく、人生経験を経て紳士になったような印象だ。とは言え、そういう微細な違いがわかるのは使っている本人だけで、撮っている奴が同じならば自然と同じようなテイストに収まるものである。CCDとCMOSの違いも同じことが言える。ただし、色や光といった特定の条件が重なった場合にCCDとCMOSの違いは顕著になる。それはデジタル画像というよりも、1枚の物質的な写真を感じる雰囲気だ。
一眼レフはもはや時代遅れのシステムで、夜や逆光といった様々な用途に適したカメラではない。僕が好きなマニュアルレンズを使うのは難しいし、シャッター音がうるさいので人の多い場所で使うのに向いていない。多くの人を敵に回す言い方を恐れずに使うと、ニコンやキヤノンをはじめ一眼レフスタイルのカメラのデザインを毛嫌いしてきた。お世辞にもいいデザインとは言い難い。もっとはっきり言うと「最悪」だ。クソだ。耳クソだ。カメラ業界のトップが日本になる前は、もっと品があって素敵なデザインのカメラが多かったのに、日本の一眼レフがメインになってからはデザインが単なる業務用の塊になってしまった。そんなカメラを自分が使うことはないだろうと思っていたが、まさか喜んで使うことになるとは…。CCDセンサーは、僕には合っている気がする。CCDセンサーでEVFでフルサイズでシンプルなデザインでライカMマウントでという都合のいいカメラがあったらすぐにでも飛びつきたいが、唸ったところでないものはないのである。
使ってみるとレンズ交換式一眼レフもセンサーダストと無縁なわけじゃないことがわかった。経年劣化という悲しい事実があって、センサー室の部材が劣化してカスが出て、ミラーが跳ね上げる度にカスが舞うということがあるらしい。D3000をセンサークリーニングに出したり自分でブロワーで吹いたりしたが、時間が経つとどこかしらにセンサーダストがあってゼロにはならなかった。気に入ったものはずっと使っていきたいと思うが、なかなかそうもいかないものである。状態のいい中古品も少なくなってきていると聞くし、手に入らなくなる前に買っとけという時期なのかもしれない。あの人いい人だったなぁ、死ぬ前に一度会っておきたかったなぁ。そう思っても時間は巻き戻せないのである。
このページの撮影機材

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- LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ
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