見直しと修正の日々

2020.05.04PHOTOGRAPH and WOLF

LEICA M Typ240 / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

LEICA M Typ240 / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

少し前まで曖昧だった新型コロナの影響が、ついに具体的な形になって重くのしかかってきた。あらゆる事業が売上を持たずに数ヶ月耐えられるビジネス設計をしていないはずだから、すぐにでも倒産と失業の波が押し寄せてくるに違いない。こういう事態になると、日頃ほったらかしにしてきた問題点が浮き彫りになる。

新型コロナについて色々な情報が飛び交っているが、いまのところ想像の域を出ない曖昧な情報ばかりだ。しかし、感染するものである以上、すべての人が外に出なければ目に見えて収束するに違いない。「人と会わない」ために「外に出ない」。公園なら行っていいとか、スーパーなら行っていいとか、家族となら出かけていいとか、そういうことではない。選択肢があるならば「外に一歩も出ない」というのが本来の自粛でる。日本人じゃないからと当たり前のようにマスクをしない外国人や、マスクをつけて周囲に汗を振りまきながら走っているジョガーは完全に論外で、ウィルスに感染しなくても、あるいは人に感染させなかったとしても、国内で新型コロナが収束しないかぎり日常は戻ってこない。日常が戻ってこないと困るのは我々自身である。政府の対応がどうとか、協力金が少ないとか、市販のマスクじゃないと恥ずかしいとか、そんなこと言っている場合ではないのだ。

先日、実家に電話し両親が日課としている散歩中に必ずマスクをつけるよう促すと、朝に近所を散歩してもすれ違うのは車数台くらいだと言う。あぁ、素晴らしいかな過疎化の進んだ田舎町よ。たしかに実家のある町は、ヤパイくらい人の気配がない。僕が免許を取った30年近く前でも、前も後ろも車がいないという状況が多々あった。年金暮らしの両親にとっては、この状況にあっても「ちょっとの我慢」で済むようである。しかし、気持ちが悪いほど過密に人が暮らしているエリアではそうもいかない。やはり極力「外に出ない」ことが求められる。そんな状況下では、写真を撮りに出かけるのは難しい。

過去の自分の仕事についてじっくり見直したりすることはほとんどないが、撮った写真については何度も見直すようにしている。何度も何度も見直すと、撮影や現像のときには気づかなかった細かい部分が見えてくる。1ヶ月前に撮ったものを見るとき「おっ、いいね」とか「このセンス、凡人にはわからんな」とか1人でほざきながら悦に入ることになるわけだが、それが1年前のものとなると「なんだこりゃ」と落胆することがある。価値観は変わる。ささやかなマイブームを含め、個人の価値観は常に流動しているのだ。もちろん、写真のいい悪いを単純な数値に置き換えることはできないから、自分の中で成長していると思っていても、実は退化しているのかもしれない。それでも、過去の写真を久しぶりに見ると「なんだこりゃ」と思うことがある。特に現像についてだ。

再現像の前後01
2020年の現像:CANON 50mm F1.8 II 01

SONY α7S / CANON 50mm F1.8 II

1年ほど前に撮ったものを、再びrawデータから現像する。データをちゃんと保管していれば、いつでも自由に取り出して再現像できる。デジタル写真の素晴らしさの1つだ。光沢の印画紙にプリントされた写真よりも書籍や写真集のようにマット紙に印刷された写真が昔から好みで、結構な頻度でレンジを狭くし彩度を低めの写真に現像してきた。photoshopでの現像設定もそういう要素をデフォルトに設定していた。最近では、自分で設けた自分のためのフォーマットにあまり縛られず、もっと感情的に現像していこうと意識している。そんなことを言うとミスチルの歌詞みたいだが、いつまで持つか知れない現在の感性で、しばらく前に撮った写真を再現像していく。

再現像の前後02
2020年の現像:CANON 50mm F1.8 II 02

SONY α7S / CANON 50mm F1.8 II

過去に撮った写真を再び現像するのは結構楽しい。現像のさじ加減で写真は随分違うものになるし、やればやるほど感性が鍛えられていく気がする。自粛中の楽しみとして、写真の再現像はお薦めだ。ライカMマウントの沈胴レンズLEICA Summicron 50mm F2.0とライカLマウントのオールドレンズCANON 50mm F1.8 II。どちらも古いレンズで、細かな描写は苦手とするオールドレンズだが、現像で引っ張り上げるとなかなかエモい雰囲気になる。コントラスト強めの現代的な写真にしても、拭いきれないレンズの欠落がある。この欠落がいい感じのスパイスになっている。巣ごもりしてたって「写真」を楽しむことはできるのだ。

再現像の前後03
2020年の現像:CANON 50mm F1.8 II 04

SONY α7S / CANON 50mm F1.8 II

再現像の前後04
2020年の現像:LEICA Summicron 50mm F2

LEICA M Typ240 / LEICA Summicron 50mm F2.0 Collapsible

再現像の前後05
2020年の現像:MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

今話題になっている「9月入学」や事業存続のための再編成など、新型コロナによって急速な見直しが求められている。新型コロナのせいでビジネスや家族関係が悪くなったように思われがちだが、もともと持っていた問題点が姿を表してわかりやすくなっただけではないだろうか。普段向き合ってこなかった問題点に、正面から向き合うのは面倒だ。写真の現像なら簡単にやり直しができるが、人間関係やビジネスを再構築するのは大仕事だ。それでも見直しと修正をすることには大きな意味がある。面倒だろうが金がかかろうがリスクがあろうが、今やっておけば数年間は驚くほど楽になるかもしれない。新型コロナでオロオロしている人は見直しをサボってきた人だ。本当は日々少しずつ見直しと修正をしておくのがいいのだろうけど、僕を含めほとんどの人は怠け者ですから、何というか、まぁ、大変なのは仕方がないね。

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