夫婦とか家族とか
2018.03.18PHOTOGRAPH and WOLF結婚しない、という人が増えている。若いうちに結婚をして子供をつくるのが当たり前だった頃は、30過ぎて結婚していない人は親不孝、バチあたり、不良品と散々な言われ方をしたが、障害未婚率が男性23%女性17%の現在の日本では、若いうちに…というのももはや常識ではなく、30代の独身者もマイノリティじゃない。社会の常識というは普遍的なモラルが支えているのではなく、ただ単に多数決で決まっているので、経済や生活が変われば社会の常識もあっけなく変わってしまう。女性の経済自立、父親権威の崩壊、終身雇用の終焉と既婚率を下げる要因がある中、みんな結婚してるんだから結婚するのが常識でしょ、といった薄っぺらい説得では誰も結婚しない時代と言える。もちろん今でも多くの人が結婚して子供を育てているわけだから、そういった多数の流れ中にいるメリットは大きい。その一方で、多数属すること以外で自分の家族を持つことのメリットを語れる大人は、本当に少ない気がする。
人とそれ以外の生きものでは、家族、夫婦、親子といった関係も違うと聞く。動物の場合、種を存続させるというシンプルな使命のもと、交尾し子供を守る。子供が食料を自分で確保できるようになると親子関係を解消するというのだから、すこぶるシンプルな関係だ。昔は日本も家計存続、子孫繁栄という価値観が機能していたようなので、感覚的には動物に近い。動物でも群れをつくる種類なら、人の家族や夫婦のように老いて死に至る日まで共に時間を共有していくんだろうか。
結婚は面倒だからしなくてもいい、という若い人の気持ちはわからんでもない。人生の先輩である40代から60代、つまり我々の責任である。仕事に追われ、家庭の事情に苦しみ、子育てに疲れ果て…。そんな既婚者が本当に多い。酒を飲んではしんどい自慢、いつかおまえも…なんて不幸を押しつける先輩に囲まれていたら、誰だって同じような人生を送りたくないと思うはずだ。大体、仕事も家事も1人でできる人に結婚など必要だろうか?
結婚のメリットは2種類あると思う。社会的なメリットと個人的なメリットだ。社会的なメリットは「何で結婚しないの?」と言われなくなること。現在では既婚者の方が多数である。多数に属していないだけで「何で?」と言われる理不尽な世の中である。この「何で?」は、30歳前後からはじまって、ほぼ生涯言われる可能性がある。え?ホモなの?デブたから?変態だから?親がヤクザだったりして?と必要以上の憶測を伴って、時として弁解も必要になってくる、実に鬱陶しいことなのだ。この「何で?」はあらゆるシーンで人を疲弊させ、消耗させ、孤独にする。「何で結婚しないの?」と言われなくするためには結婚しなければならない。
個人的なメリットは、長期的な体験、空間、時間の共有である。もちろん友人関係でも長い時間を共有できるが、40年、50年という単位になってくるとなかなか難しい。長い歳月を共にすると、自分のことを大体わかってくれるとか、少ない言葉で意思疎通ができるとか、そういうトラフィックなメリットもあるが、成長と老いを共に歩むことで自分の人生を噛みしめることができるというのが見逃せないメリットだ。相手が老いてゆくのを感じることで、自分の老いを知り、やがて死ぬことへの自然な受け入れができるようになる。そして、パートナーがいると行動に制限が生まれる。これはできない。あれはやれない。そういう制限は時としてたまらなく窮屈だか、適度な制限は心を安定させる。日本で結婚すると、必ず制限がある。そして、制限がない状況で幸福を感じることは難しい。
群れをつくる動物にしても、個で生きるよりも何かしらの制限の中で生きている気がする。制限が多すぎると発狂していまうだろう。逆にまったく制限がないと、それはそれで発狂してしまうかもしれない。嫌なものに縛られる人生は辛く切ないものだが、愛しいものに縛られるなら悪くない。
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- LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ
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