近くに寄りたい欲求

2019.05.03PHOTOGRAPH and WOLF

ライカM マクロ撮影01

LEICA M Typ240 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

レンジファインダーでピントを合わせる場合、ライカMの最短撮影距離は70cmだ。70cmというのは案外長い距離的で、目の前の料理を撮るなんてキレイサッパリ諦めた方がいい。他のデジカメやスマホと比べるのも酷な話で、なにせ昔のフォーマットなので仕方がない。ライカMでも被写体に寄って写真を撮る方法がある。レンジファインダーを使わない、つまり背面液晶や外付けビューファインダーを使ってピントを合わせる方法だ。

ライカMマウントのレンズは、レンジファインダーを前提につくられているため、ほとんどのレンズの最短撮影距離が70cm。マクロ撮影を楽しみたかったらレンズと本体の間に接写リングを挟むか、レンズの先にクローズアップレンズをつけることになる。接写リングの場合、拡大率はかなり上がるのでまさにマクロという感じだが、レンズのヘリコイドを回してもビューファインダーは連動して拡大してくれないので「ほどよい寄り」と快適なピント合わせを望むならクローズアップレンズを使った方が便利だ。写真を撮りに出かけるとき、バッグのなかにビューファインダーとクローズアップレンズをつっこんどいて、寄って撮りたいと思ったときにカチャカチャとつける、という感じ。マクロレンズを持ち歩く必要もないし、慣れると悪くない。

ライカM マクロ撮影02

LEICA M Typ240 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

ライカM マクロ撮影03

LEICA M Typ240 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

ライカMマウントのレンズではなく、一眼レフのレンズをアダプターを介して使うという手もある。僕の愛するSuper Takumar 55mm F1.8は最短撮影距離が45cm、ヘリコイド付きM42マウントのアダプターを使えばさらに近くまで寄ることができる。使ったことはないが、オールドレンズには18cmまで寄れるフレクトゴンというレンズもある。ソニーα7R2とnokton35mmを組み合わせて使っていたときは、常にヘリコイド付きのアダプターを使っていた。ソニーEマウントでライカMマウントのレンズを使う場合、コシナのアダプターか、軽量なHawk’s Factoryのアダプターがいい。ライカMにつけられる外付けファインダーはお世辞にも快適とは言い難いので、しょっちゅう70cm以内のものを撮っている人にはライカ以外のカメラをお薦めしたい。

ライカM マクロ撮影04

LEICA M Typ240 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

ライカM マクロ撮影05

LEICA M Typ240 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

ライカM マクロ撮影06

LEICA M Typ240 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

LEICA M Typ240 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

ライカM マクロ撮影07

LEICA M Typ240 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

写真を撮りだすと、誰しも1度はマクロ撮影の虜になるものではないだろうか。肉眼とは違う独特の距離感。ファンタジーのような世界観。非焦点部分の盛大なボケ。ファインダーを覗いてシャッターを切っていると、麻薬に侵されたジャンキーのように恍惚とその世界に引き込まれていく。被写体にもっと寄りたい、もっと、もっと、とヨダレを垂らしている自分に気がついたら、早めに病院に行った方がいい。甘いものにむしゃぶりつくように、マクロの世界に埋没していると、周囲の状況が見えなくなってくる。はっ、と我に返ると、あまり人には見られたくない不気味な体勢をしていたりもする。何かに埋没するというのは、そういうことなのだ。35mmや28mmで広い画角の写真ばかり撮っていると、被写体に寄った写真が撮りたいという欲求が湧いてくる。子供のように時間を忘れてアホになりたい。客観的に世の中がわかるようになった大人だからこそ、そう思うのではないだろうか。

ライカM マクロ撮影08

LEICA M Typ240 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

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