現像の愉しみ
2020.11.06PHOTOGRAPH and WOLFフィルムで写真を撮る若い人が増えているらしい。フィルムカメラで写真を撮る人がいることや、デジタルで撮った写真をフィルム調に現像することを好む人が多いことから、フイルムと印画紙に定着されるアナログ世界には、何かしら魅力があるということなのだろう。実際にはアナログチックな風合いをデジタル現像で再現することができるので、フィルムカメラで写真を撮る人はフィルムをセットしたり現像に出したりといった所作を楽しんでいるのがもしれない。中古カメラ店に行くと昭和時代に活躍した黒とシルバーのカメラが並んでる。ライカ、ライカを真似たもの、ハッセルやローライ、日本の一眼レフ。いつ見てもアナログのカメラはカッコイイ。レトロという先入観を抜きにして眺めても、昔のカメラの方が美しいのは何故だろう。昔のものはよかったのに、日本がカメラ大国となってからのデザインがよろしくない。悲しいかな我々日本人には、模倣はビカイチでもデザインで世界を牽引する力はないらしい。ピザやスイーツの世界大会で日本人がグランプリを取っているが、それも他国文化の模倣に過ぎない。
我々グラフィックデザイナーの仕事も何年も前から完全にデジタル化し、手描きをすることがほとんどなくなった。それでも手描きやアナログの質感が欲しくて、紙に描いたものをスキャンしてパソコンに取り込んだり、キレイな文字をワザと粗くして仕上げたりして、デジタルの中でもアナログを表現することもあった。無機質なレイアウトの中に筆と絵の具で描かれた1枚のイラストが入るだけで、突然魅力的なデザインになってしまう。アナログの質感にはそういう力がある。アナログは確かにいい。レコードとスピーカーで再生された音楽は音が最高だし、凧揚げもドローンにはない風情がある。電気で便利になったものは数限りなくあるが、アナログの方がいいよね、というものも沢山ある。フィルムカメラの風情も、デジタルカメラにはないものかもしれない。
僕もその昔、35mmのフィルムを買って写真を撮ったことがあるが、それはデジカメがなかった時代のことで、デジタルに慣れ親しんでからはフィルムを買ったことがない。アナログカメラとデジタルカメラの違いは、コスパや風情といったもの以外にも重要な部分がある。それは自身でコントロールできるかどうかだ。デジタルと違ってフィルムで撮った場合は、現像とプリントを他人に委ねることになる。現像するのが街のサービスでも熟練のプロでも、他人に現像してもらうことに変わりはない。仕上げの機械がオート設定なら、露出がオーバーしたりアンダーなものを自動補正して現像とプリントをするだろう。カメラの方も実際の露出をファインダーで確認することはできないので、ある程度カメラの計測やカンに露出を委ねることになる。もちろん、経験とスペシャルなブレーンを持っていれば、細部のこだわりを具現化することはできると思うが、デジタル現像に比べると遥かにハードルが高い。写真の仕上がりを自分でコントロールするか、他人任せでもかまわないか。デジタルとアナログの大きな分かれ道だと思う。個人としてどちらの方が楽しいかがポイントで、どちらがいい、という話ではない。
そんなこんなで言うと、僕は圧倒的に「自分でコントロールしたい」派だ。写真の現像は面倒な作業だが、こんなに面白いパートを他人に譲るつもりはさらさらない。1枚の写真は現像のさじ加減でまったく別物になってしまうからだ。料理に例えるなら、現像は盛り付けだ。どんなに素晴らしい料理をつくっても、盛り付けがひどかったら料理は台無しになってしまう。最高の食材で最高のシェフが調理しても、盛り付けが最悪だったら食べる気はしないだろう。現像については写真のテイストを決定づける重要なパートなので、料理なら「味付け」と「盛り付け」を担う繊細な部分なのだ。カメラが好きか、写真が好きか。少しでも写真が好きなら現像は最も楽しい作業と言える。現像するアプリケーションは正直何でもいい。キャプチャーワンでもライトルームでもフォトショップ(camera raw)でも、とにかく自分が使いやすければそれでいい。もちろん作業によっては向き不向きが現像ソフトにはあるが、アプリケーションが写真の優劣を決定することはない。パソコンとアプリケーションはデジタル現像するための道具だが、あくまで写真を現像するのは自分の「脳」だからだ。
1度現像した写真を、改めて違うアプローチで現像するのも面白い。RAWデータがあれば何度でも現像することができるし、あーでもないこーでもないとグズグズやっていても、1人で悶々とやっているなら誰にも迷惑をかけることもないだろう。柔らかく現像したものと、強めに現像したもの。比べて見てどちらが自分の感性を強く揺さぶるのか、それを確かめるために2つの現像をしたのに、僕の予想を裏切って「どっちもいいね」という結論に達した。両方いいね。それは仕事や結婚や住宅購入の場面では許されない。「どっちもいいね」と言えるのはある意味幸せなことなのかもしれない。写真の世界ではそれがある。
このページの撮影機材
SONY
α7S(ILCE-7S)
OLYMPUS
PEN-F
LEICA
Summicron 50mm F2.0 Collapsible
MINOLTA
M-Rokkor 28mm F2.8
Hawks Factory
Adapter
-
写真集「BLUE heels」
¥1,100 -
写真集「Nostalgia」
¥1,100 -
写真集「植物美術館」
¥1,100 -
写真集「花美 1」
¥1,100 -
写真集「花美 2」
¥1,100 -
写真集「花美 3」
¥1,100
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- 2017.12.27日本人は写真が好きな人種だと思う
lens
- LEICA Summicron 50mm F2 1st Collapsible
- Thypoch Eureka 50mm F2
- MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8
- MINOLTA M-Rokkor 40mm F2
- MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4
- Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ
- Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5
- Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ MC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 E-mount
- Voigtlander NOKTON Classic 40mm F1.4 SC
- Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC
- Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8
- PENTAX Super Takumar 50mm F1.4
- PENTAX Super Takumar 55mm F1.8
- PENTAX SMC Takumar 200mm F4
- Nikon Nikkor-H Auto 50mm f2
- Nikon Ai Micro-Nikkor 55mm f/2.8S
- CANON 50mm F1.8 Ⅱ
- CANON 100mm F3.5 Ⅱ
- ZEISS Planar T*2/50 ZM
- GIZMON Wtulens 17mm F16
- OLYMPUS M.ZUIKO 12mm F2.0
- OLYMPUS M.ZUIKO 25mm F1.8
- OLYMPUS M.ZUIKO 40-150mm F4.0-5.6R
- LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ
- All Photograph