モノクロ写真の追求

2024.09.06PHOTOGRAPH and WOLF

Nikon Zf / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

モノクロ写真を撮るのは写真の腕を磨くいい練習になる、とよく言われるがその通りだと思う。いざ撮ってみると、なかなか難しい。それがモノクロ写真の撮影である。一眼レフやレンジファインダーでモノクロ写真を撮る場合は、カラーで見える世界を頭の中でモノクロに変換しながら撮るとになるが、ミラーレスカメラのEVFならファインダーの画像をモノクロにできるので格段に撮影しやすい。普段見慣れているものもモノクロにするだけで非日常的な世界になる。その非現実感が楽しいのだが、撮りつづけるとその難しさにぶち当たることになる。感性を働かせずに安直に撮って現像すると、どこからどう見ても良さを見出せないゴミのような写真を量産してしまう。色がない。ただそれだけのことなのに、写真はこれほど難しいものなのかと落胆することになるのだ。モノクロ写真は撮影者に感性やモノの捉え方に軸があるか否かを如実に問いかけてくる。ある意味デッサンのごとく基礎的な力を試されるものでもあるが、海外ではプロカメラや作家の作品としていまだにモノクロ作品の評価が高いと聞くので、「ベーシック」であり「上級」という不思議なポジションにあるのがモノクロ写真である。

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

FUJIFILM X-E4 / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

さぁ、今日はモノクロでいってみますか。その日の気分でモノクロを選択する。「どうせカラーで撮れるんだからモノクロだと決めずに撮っておいて現像のときに考えればいいじゃないか。」と考える人は完全にモノクロ素人である。カラーを前提に撮ったものをモノクロに変換してもうまくいかない。モノクロ写真にするならモノクロを前提に撮らないと成立しない場合が多い。美しい微妙なグラデーションの夕焼けを撮ってモノクロにしたら何がいいのかわからない写真になってしまうように、どんなに素晴らしい情景でもモノクロで魅力が発揮されなければ撮る意味がない。モノクロで表現しにくいものの1つが「抽象的に見える物や情景」だ。カラーなら写っているものが何なのかよくわからなくても「質感がいい」とか「色合いがいい」とかそういうディテールを楽しむことができるが、モノクロの場合はそれがない。花、顔、車、犬といった誰が見てもわかる対象で、写っているものがある程度整理されていないと「何だかよくわからない」ものになってしまうのだ。

Nikon Zf / Thypoch Eureka 50mm F2

Nikon Zf / Thypoch Eureka 50mm F2

LEICA M11 / Thypoch Eureka 50mm F2

LEICA M11 / Thypoch Eureka 50mm F2

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

Nikon Zf / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

Nikon Zf / Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2

人工物は割とモノクロで撮りやすい。建物に道具にしろ、そのもの自体にコントラストがあればモノクロでの表現がしやすくなる。それに比べて、自然界の花や木の魅力をモノクロに落とし込むのは少々難しい。しかし、難しいからと言っておめおめと白旗振って引き上げるわけにはいかない。世の中の大抵のものは気合入れたり汗かいたりすれば、意外と簡単に手に入るものなのだ。先天性と思われがちな才能や、限られた人だけが手にできると思われがちな能力は、実はいつだって手の届く距離にある。多くの物事は、やれる人ができたのではなく、やった人だけが「できる」のである。そんなこんなで、木々や植物のモノクロ写真に挑み続ける。

LEICA M11 / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

LEICA M11 / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Thypoch Eureka 50mm F2

LEICA M11 / Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2

LEICA M11 / Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2

Nikon Zf / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

Nikon Zf / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

LEICA M11 / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

LEICA M11 / Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2

Nikon Zf / LEICA Summicron 50mm F2 Collapsible

言うまでもないことだが、モノクロ写真には色がない。これを制限と考えるか、自由と考えるか。色がないから、撮影時に色のことは考えなくてもいい。デジタル現像で色のことを気にする必要がない。そう思えばモノクロ写真は、ある意味「色から脱却できる自由な世界」とも言える。「写真は真実を伝えるものだ」と誤解した人たちが、画像の色調整やraw現像の表現を「やりすぎ」とか「不誠実」だとか言うことがあるが、色のある世界をあえてモノクロで表現するモノクロ写真は、現実世界を非現実に表現する最たるもので、その行為は合成や着色やデカ目の比ではない。写真撮りがモノクロ写真を好むのは、現実とは少し違った見え方を写真の中に求めていることの表れで、情報伝達としての写真の役割が映像にバトンタッチしたことにより、写真と絵画の境界線が曖昧になっていることを示唆している。

世の中にはモノクロ写真しか撮らないという奇特な人もいるが、気が向いたときに撮ってもモノクロ写真は面白い。そして難しい。「写真を撮る」というのではなく「絵を描く」つもりで取り組むと、カラー写真に負けない魅力ある写真になる気がしている。

Nikon Zf / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

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