モノクロで自由になる感性

2021.03.11PHOTOGRAPH and WOLF

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

写真を熱心に撮りだしたのが4年前、モノクロ写真を撮りだしたのが4ヶ月前で、どちらもまあまあ日が浅い。それでも、そこそこのカット数を撮り続けているので、自分なりに写真というものを捉えることができる。頭のいい人たちは様々なものを少ない経験の中から捉えることができるだろう。しかし、僕のように凡庸かつ頭の回転が遅〜いトロ〜い残念な人間は、とにかくコツコツと地道に経験を重ねていくしかないのだ。ただし、頭がよくない人間にもメリットがある。それは技術や感性を自分の経験から体得できることだ。

万人向けではないが、自分の中で「いい色」というのがあって、カラー写真では結構な比重で色に反応して写真を撮っている。現像時に撮った色が気に入らなくて、色を変えてしまうこともよくある。現像を人任せにするフィルム現像と違って、デジタル現像では自分のルールで写真を仕上げるので、カメラメーカーによって違うのセンサーの色味とか、ホワイトバランスの精度とか、レンズによって違う色味とか、カメラのエフェクト機能とか、そういうのは気にしたことがない。色味、は重要だ。カメラなんかに任せておけない。色味は自分で決めるもの、だからこそ写真を撮ることが面白くなるのだ。そういった拘りがある写真撮りが、色のないモノクロを撮りだしたらどうか。

SONY α7S / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

SONY α7S / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

OLYMPUS PEN-F/ LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

マニュアルレンズでモノクロ写真01

SONY α7S / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

モノクロで撮ろうとすると、肉眼で反応した「いい〜色だなぁ」というのは意味をなさない。どんなに色がキレイな情景や植物があっても、モノクロで撮ると残念な結果になることもある。なにせ色がないのだから。ファインダーから見る無彩色な世界に慣れるのも、時間と気持ちの切り替えが必要になる。今はミラーレスがあるからモノクロを目で確認して撮れるけど、一眼レフやレンジファインダーのカメラの場合、カラーで見えているものを頭の中でモノクロに置き換えて撮るわけだから、それはそれは大変である。カラー写真よりも制約がありそうに思えるモノクロ写真。しかし、いざ撮り始めてみると、意外と肩の力を抜いて撮ることができる。はじめは、モノクロで撮っていることが新鮮でそれが気持ちを軽くしてるのかな、と思っていたが「色がない」という制限が実は大きな意味を持っていることに気づいた。モノクロには拘りを持って精査する色がない。白から黒までのトーンがあるだけだ。シンプルかつ強力な制限があるために、逆に気持ちが楽になるのかもしれない。色という領域に踏み込めない限界がハッキリしているために、色のことは考えずにすむ。ライカM10モノクロームというモノクロ写真しか撮れない稀有なカメラがあるが、モノクロでの画質が云々というよりも、カラーが撮れないカメラということにあのカメラの真髄があるように思える。オートフォーカスができないマニュアルレンズ、それと同様、カラーが表現できないモノクロには我々を「自由」へと誘う心地いい「制限」があるのだ。

マニュアルレンズでモノクロ写真02

SONY α7S / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

マニュアルレンズでモノクロ写真03

SONY α7S / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

マニュアルレンズでモノクロ写真04

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

マニュアルレンズでモノクロ写真05

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

マニュアルレンズでモノクロ写真06

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

仕事ではなく、妻や犬たちの思い出記録でもない、表現を楽しむ自分だけの写真を撮っているときは、写真と撮るというよりもカメラを使って「絵を描く」気分で写真を撮っている。モノクロで撮るときにはそういうモードがより強くなる。モノクロを撮りだしてわかったのは、モノクロのトーンには3つの選択肢があること。白地に黒で描写する。黒字に白で描写する。そして中間色で描写するグレートーンだ。この3つのどれにも当てはまらない曖昧なトーンに仕上げてしまうと、モノクロじゃなくてもいいんじゃないの?という「ぬる〜い写真」になってしまう。コントラストが強いのか、階調が柔らかいのか。強くもなく、柔らかくもない、そういう写真はモノクロには向いていない気がする。日常的で現実感のある写真なら、どちらかと言えばカラーの方がいいと思える。モノクロなら、少々非現実的でやらしい感じに攻めていく方が楽しそうだ。やらしい感じ、という表現が既にいやらしいが、スケベという意味ではない。僕のようなキャリアの浅い写真愛好家であったとしても、著名なアーティストになったつもりで意味深な写真をぐいぐい撮っていこうね、そういう意味である。

マニュアルレンズでモノクロ写真16

SONY α7S / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

マニュアルレンズでモノクロ写真07

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

マニュアルレンズでモノクロ写真08

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

マニュアルレンズでモノクロ写真09

SONY α7S / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

マニュアルレンズでモノクロ写真10

SONY α7S / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

マニュアルレンズでモノクロ写真11

SONY α7S / Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ

マニュアルレンズでモノクロ写真12

SONY α7S / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

マニュアルレンズでモノクロ写真13

SONY α7S / MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4

マニュアルレンズでモノクロ写真14

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

モノクロ写真を撮るモードを体に染み込ませるのはそれなりに時間がかかりそうだが、ミラーレスのカメラのファインダーをモノクロに設定してしまえば、あっという間に世界をモノクロで見ることができる。肉眼ではカラーでしか見ることのできない世界が、カメラを通して非現実的で無彩色な世界に一変する。モノクロなら駅前の花壇で何でもない植物を撮っても、印象的な写真にすることもできる。写真をゆっくり撮る時間がなかなかとれない多忙なビジネスマンにも、モノクロ写真はお薦めだ。例え5分しか撮影時間がなかったとしても、モノクロは自由を約束してくれる。

マニュアルレンズでモノクロ写真15

OLYMPUS PEN-F/ MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

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