夜の撮影 α7R2 vs PEN-F

2018.09.26PHOTOGRAPH and WOLF

夜の撮影α7R2:01

SONY α7R2 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

夜に街の写真を撮るのは、すこぶる気持ちがいい。昼の喧騒が過ぎ去り、ゆっくりとした空気感の中で被写体を探す。三脚を立て、構図を決めてピントを合わせる。絞りを設定して、タイマーやバルブを使ってシャッターを押す。30秒から1分はシャッターが切れるまでの時間。自分のまわりの時間がさらにゆっくりと流れる。

夜の撮影α7R2:02

SONY α7R2 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

α7R2に7,000円で買ったオールドレンズPENTAX Super Takumar 55mm F1.8をつけて撮影する。地面にカメラを置いて撮影したので三脚は使っていない。肉眼で見るのと少し違う幻想的な世界が長時間露光によって描かれる。

夜の撮影PEN-F:01

OLYMPUS PEN-F / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

PEN-Fも負けていない。マイクロフォーサーズというフルサイズの半分しかないセンサーを持つPEN-Fだが、画質での見劣りはまったく感じさせない。レンズはコシナのマニュアルレンズVoigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SCを使っての撮影。

夜の撮影PEN-F:02

OLYMPUS PEN-F / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

カメラを選ぶときの基準は人それぞれにあるだろう。僕の場合はデザイナーという職業柄、時々仕事で使えることも条件に入るが、他にもいくつかの基準がある。まずミラーのついた旧タイプの一眼レフは除外。デザインがシンプルなこと。軽量であること。手ぶれ補正機能がある。サイレントシャッターが可能。といった具合だ。手ぶれ補正機能があれば暗い室内でも遅いシャッタースピードで撮影できるので、ISOを高くする必要がなくなりノイズを抑えた写真が撮れる。サイレントシャッターがついていれば、シャッター音を下品にパシャパシャ立てたくないレストランなどの場所で静かに写真を撮ることができる。この2つの機能は必須だ。世界の2大メーカーのニコン、キャノンが重い腰を上げてようやくフルサイズミラーレスカメラを発売し始めたが、大きなフラッグシップモデルを小さくしてみた、といった感じのデザインでいい印象が持てない。

ソニーα7R2(ILCE-7RM2)とオリンパスPEN-Fは、どちらも条件をクリアしていて甲乙つけがたい。α7R2はフルサイズ、PEN-Fはマイクロフォーサーズで撮影素子のサイズは2倍ほどの違いがあるが、画質については「同等」と捉えてもおかしくはない。画質は使うレンズや現像方法によっても大きな差が出てくるので、センサーサイズの違いは画質ではなく「画角」と考えた方がいいだろう。マイクロフォーサーズはどうしても画角が狭くなるのでフルサイズセンサーのα7R2に軍配が上がる。その一方でデザインはPEN-Fの方がはるかにいいと思える。ライカのようなシンプルなフォルムで、無骨なグリップがないところも非常にいい。カメラに当たり前のようにつけられたあのグリップが嫌いだ。人それぞれ手のサイズや癖が違うのに、指の位置まで強制的に固定するカメラのグリップは、右手を本当に疲弊させる。PEN-Fはグリップがないし、とても軽い。ライカのようなシンプルで美しいカメラに好感が持てて、でもライカは高いし使いずらいし…と思っている人には、間違いなくPEN-Fが合っていると思う。

愛すべきカメラPEN-Fは、α7R2を手に入れるために売ってしまった。α7R2は悪くないカメラなんだけど僕の右手には本当はPEN-Fの方がしっくりくるんだよなぁ…と、α7R2のグリップを握る度に別れた女性を想うような女々しい気持ちになる。人間だもの。

夜の撮影PEN-F:03

OLYMPUS PEN-F / M.ZUIKO 12mm F2.0

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