写真集をつくる

2022.01.29PHOTOGRAPH and WOLF

何に使うでもなく写真を撮ってきた。ギャラリーに展示するわけでもなく、誰かの依頼でもなくせっせせっせと撮りためた写真たちがある。自分が撮った写真を自分自身が見直すためにこのブログをつくったが、思いのほか多くの人がこれを見てくれて、ささやかな僕の写真ギャラリーとなっている。プリントを展示するギャラリーをやったら?と言われることもあるが、何となくこっ恥ずかしくて性に合わない。写真を撮ることは完全にライフワークになり、できれば死ぬまで続けていきたい。職業であるグラフィックデザイナーの仕事の1つとして、写真を撮ってクライアントに納品することはあるが、僕は商業カメラマンではない。生活を支えている生業は他にあってそれは今後も変わらないので、作品を世に売り出して生きていく写真家とも違う。じゃあ、なぜ写真集をつくるかと言えば、つくったそれを眺めて「おっ、おぅ〜、いいねぇ〜、最高だねぇ〜。もしかしてオマエ世界で1番いいんじゃないのぅ?へへへ」とだらしなく悦に浸りたいだけだ。人に迷惑をかけない自己満足、人生の楽しみはそこにあるのだ。

写真集というと従来は出版社を通して発行するものだが、僕のような輩は自分で金を払ってつくるしかない。たくさんつくると保管するのが大変だから少ない冊数をつくる。デザイナーを生業にしているので小冊子をデザインして印刷するのはお手のものだ。しかし普段やっている仕事とは考え方を少し変えて、企画や構成やデザインよりも写真1枚1枚を小冊子の中でシンプルに展示したいという思いから、デザインを感じさせないほど即物的でシンプルなデザインでまとめた。一般の人や経験の浅いデザイナーが見たとき、デザイナーが関与していると思わないほど淡白なデザインにすることで、写真1枚の存在が浮き彫りになる。こういう考え方はデザインを納品するクライアントにはあまり歓迎されない。シンプルすぎて「仕事をしていない」と言うわけだ。もちろん、自分の著作物ではそんなことは気にする必要はないので、他人によく思われることではなく自分がいいと思うことを優先していく。

写真集をつくるため撮りためた写真をセレクトしていく。10枚から1枚を選ぶ、100枚から1枚を選ぶ、そういうのは慣れない人だと結構大変と思う。僕のような職業だと、多くのものから1つだけ選ぶという行為を散々やってきて普通の人よりは格段に速く判断できるが、いざ自分の写真となるとコレがなかなか難しい。困ったことにどれもこれも愛着があるからだ。そして選ぶための「基準がない」という事実を突きつけられる。コレはいい、コレはだめ、という自分の中の基準である。そういう基準が心の中にバシッと存在していれば、あらゆる選択はあっという間に解決できるのだ。基準がないのはそういうことを考えたことがないからで、基準がぼんやりしてしまうのは過去に経験が少なく未来に具体的なイメージを持っていないことが要因として考えられる。取捨選択できない、何を選んだらいいかわからない、それはつまり子供である。たかが写真集1冊つくるのだけなのに、何だおめえ子供なんじゃねぇの?サクッと選べないなら大人とは言えないね!と自分の中の悪いエンジェルに意地悪を言われてしまうのである。おっしゃる通りでございます。そんな、ささやかなすったもんだを経て写真集が5冊完成した。花の写真を集めた「花美」シリーズの3冊、青いハイヒールを撮った「BLUE heels」、記憶をテーマにした「Nostalgia」の5冊である。

写真集5冊

写真集販売ネットショップ

紙に印刷された写真は、画面で観るのと違った魅力がある。紙の手触り、印刷の発色、アナログはやっぱりいい。せっかくつくったので、周囲に配るだけでなくネットショップで販売することにした。たくさん売れても印刷代がペイできるくらいしか利益は残らないが、このブログを何回か観てくれた人には何かしら共感してもらえる写真集になったんじゃないかなと思う。ぜひ!

写真集販売 「PHOTOBOOK WOLF」
https://shopwolf.stores.jp

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