ずっと使えそうなカメラ SONY α7S

2020.10.15PHOTOGRAPH and WOLF

SONY α7S / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 II MC

パソコンを使った仕事をしていると、機械の処理速度が仕事の速さに影響する場合がある。20年以上前、パソコンの処理速度が速いか遅いかはかなり重要だった。たくさんのタスクが待っていて素早く動きたいのに、パソコンごときに仕事速度を抑えられたくないからだ。新しいパソコンの方がスペックが高い。だから2、3年毎にメインで使うパソコンを買い換えるようにしてきた。一時期、画像処理が速いという理由でウィンドウズを使ったこともあったが、マックの方が遥かに先を行くようになってウィンドウズは限られた用途で仕方なく使ってるだけのパソコンになった。映像や3Dを毎日作業することもなく、使ってるマックのパフォーマンスに不満がないので、数年前からパソコンは買い替えていない。パソコンは所詮消耗品でいつか必ず動かなくなるものだが、壊れさえしなければさらに数年は使えるかもしれない。

デジタルな道具でもアナログな道具でも、自分が求める条件を満たしていれば、面倒なアップデートは必要なくなる。僕がいま使っているソニーα7S(ILCE-7S)は、そういう意味ではソニーで買う最後のカメラになりそうだ。α7Sには外観のチープさという残念な欠点がある。今でこそ価格は落ち着いたが、高いカメラがこんなにチープでいいのかね?と言いたくなる安っぽい外観をしている。その辺はカッティングシートでカメラを別物にアレンジしたり、ケースを使ってごまかすしかないわけだが、そういうことを差し引いてもα7Sには魅力がある。

2014年に発売された手ブレ補正すらついていないこのカメラを、なぜ今後も使っていくのか?それはマニュアルレンズを使ってることが理由として大きい。オートフォーカスではなくマニュアルフォーカスで撮影する場合、自分の目と手でピントを合わせるので優れた瞳AFや素早いフォーカス機能は必要ない。頻繁に望遠レンズを使うなら手ブレ補正はあった方がいいが、そうでもないのでなくてもいい。高感度耐性は最近のカメラの方が優秀だと思うが、α7SもISO6400くらいまでなら使えるので充分だ。1220万画素というフルサイズにしては低画素なカメラであるものの、まったくもってこれも充分。RAWデータの容量はα7R2が43MB、ライカM240が24MB、α7Sが13MBで、α7SのRAWデータは圧倒的に軽い。シャッター音は最悪だが、サイレントシャッターが使えるので助かる。スマホのアプリと連動してバルブ撮影ができるのもいい。そして何よりも軽くてコンパクトなボディが最高にいい。軽いことに重点を置いたフルサイズのカメラは少ない。期待していたシグマfpが残念なことにファインダーなし、形状はシンプルでいいがとても持ちにくい。ミラーレス市場も、ボディもレンズもコンパクトさを追求しない方向のようだ。そんなことを踏まえると、α7Sのようなカメラはもしかすると今後一切発売されないかもしれない。

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7S / CANON 100mm F3.5 II

先日、15年以上使った冷蔵庫が壊れて量販店に買いに行った。冷蔵庫の外観や構造はどれも似ていて、機種やメーカーの違いが恐ろしくわかりづらかった。製品を示す品番も似ていて、もしかしたら国産の冷蔵庫メーカーは実は1社しか存在しないのか?と思えるほど。製品ごとの微細な違いは冷やし方やエコ性能といった電子部分で、正直どれを選んだらいいのかわからなかった。製品のサイズや性能は住宅事情を考えてつくられたものだと思うが、多様化したライフスタイルに合わせて、もっとカスタマイズ性の高い構造だといいのに。どうやら冷蔵庫メーカーは、本質的なものを考えるのが好きではないらしい。半年毎に大した違いのない新製品が発売され、半年前の新製品はすぐに廃版になる。

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

SONY α7S / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

カメラにしたって同じようなことが言える。カメラをパソコン化することよりも、構造を含むカメラの本質に注力すべきだと言いたい。カメラ全体や細部のサイズと質感、オペレーション効率を考えたボタンやダイヤルの配置、レンズとのバランスなど、道具としての本質はボディの外側にもある。既成概念に囚われず本質的なことを追求していけば、もっと革新的な気持ちのいいカメラが生まれるかもしれない。四角ではなく丸型のカメラ。柔らかい質感のカメラ。グリップが左右両方にあるカメラ。左右前後にボタンがあって好きな位置をシャッターボタンにできるカメラ。外付けファインダーを数種類から選べるカメラ、液晶画面が取り外し可能なカメラ。最低限の操作がボタン1つでできるカメラ。重さを変えられるカメラ。今時あってもおかしくないカメラを挙げたらキリがない。特に高いカメラの質感については、もうちょっと何とかしてもらいたいものだ。プロが使うカメラになると20万円以上もするのに、安っぽいプラ素材が使われていて非常に萎える。

SONY α7S / CANON 100mm F3.5 II

マニュアルレンズしか使わない。矯正的なグリップが嫌いだ。カメラが勝手に現像してしまうJPGやカラープロファイルは好きじゃないので必要ない。露出はISOとシャッタースピードで自分で調整してファインダーで確認するので、撮影モードダイヤルは必要ない。もちろん補正ダイヤルも必要ない。重すぎるのは勘弁してほしい。そういう偏屈な写真撮りが気にいるカメラは少ない。形はM型ライカそのもので、ファインダーがEVFだったらなぁ…。そう願うが、ないものはないのである。これはどうもなぁ、あれもどうもなぁ、そうやって選択肢を消去した結果、α7Sにたどり着いたのである。最高だとは言い難いが、決して最低ではない。こんなことを言うと一生懸命開発した人に殺されそうだが、熱愛であれ妥協愛であれ、どっちにしろ気に入っていることに変わりはない。そんなこんなで僕はα7Sを使い続ける。

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