太陽を撮る快楽

2023.02.09PHOTOGRAPH and WOLF

LEICA M11 / LEICA Summicron 50mm F2 Collapsible

人は太陽のリズムと恩恵を受けて生きている。地球の自転による1日という刻み、太陽光がもたらす栄養は我々にとって必要不可欠な要素だ。SF映画の世界では宇宙や地下で暮らす人類という設定があるが、果たして人が太陽の恩恵を受けずに健康に生きていけるのか疑問である。

LEICA M11 / LEICA Summicron 50mm F2 Collapsible

LEICA M11 / LEICA Summicron 50mm F2 Collapsible

月や星を撮るのが楽しいのと同じように、太陽を撮るのもなかなか楽しい。撮ると言ったって燃え盛る太陽の炎を捉えることはできないので、ピカッと光るアレを撮ることになる。光芒はレンズによって出方が変わる。逆光に弱いオールドレンズで撮るゴースト、35mm以下の広角レンズでF値を絞って撮る光芒もなかなかいい。太陽光の光芒を捉えるわけだから当然太陽に向かってカメラを構える。太陽光を肉眼で見るのは視力を失うリスクがあるので、間違っても一眼レフとかレンジファインダーとかEVFじゃないファインダーで写真を撮ってはいけない。太陽の光芒だけじゃ面白くないので、○○越しの太陽、○○と太陽、といった感じに撮る。キラッとかピカッとかぶわ〜んとかいう光を写真に収めるのにハマりだすと、家の近所やその辺の通路で意味深でドラマチックな写真が撮れてしまうので楽しい。長い時間をかけて赴いた場所でイメージ通りの写真が撮れなかった残念な日でも、光芒をうまく捉えた1枚を撮れば「今日はいい太陽に出会えた」とまるで詩人のような静かなナルシシズムに浸りながら安らかな眠りにつくことができるのである。そう、幸福を手に入れるのに大金は必要ないのだ。

LEICA M11 / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

LEICA M11 / Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

太陽と撮ると言えば片桐飛鳥さんの写真作品は、太陽の光を美しく撮った究極の形と言える。以前仕事をご一緒したいと計画したことがあったが、自分の力不足で機会を逃してしまった。片桐さんの写真集「Light Navigation」を1冊持っていて、これが、もう本当に、溜息がでるほど美しい写真集である。

LEICA M11 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

LEICA M11 / MINOLTA M-Rokkor 40mm F2

外に出て写真を撮っていると、太陽光の素晴らしさを感じる。日差しを浴びて気持ちがいいのはもちろんのこと、太陽光がつくりだす陰影のコントラストに溜息をつくことがある。自然光ほど豊かなライティング装置はないのでは?と思うのだ。スタジオと違って屋外では光が複雑に反射していい光環境をつくることもある。曇った日は光が回った状態で被写体が柔らかく表現される。広告写真の業界でも、緻密なライティングで完全に光を飽和して柔らかくフラットな写真をつくりだすフォトグラファーが時代を牽引することもあった。そういうテイストも嫌いじゃないが、どちらかと言えば強く激しい光源の方が好きだ。自然光なら断然「晴れの日」である。太陽そのものを捉えなくても、太陽に照らされた世界からも太陽光を感じることができる。

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC

LEICA M11 / Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2

LEICA M11 / Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2

紫外線は目を痛める。片目が緑内障の初期だと医者に言われてから、なるべく外を歩くときは日傘とサングラスを使うようにしている。症状が進んで失明なんかしたら洒落にならない。夏の日傘は必須だが、冬は寒いので日傘は使いたくない。だから、冬の紫外線は帽子でカットして服の上に降り注ぐ太陽光を楽しむことにしている。冬のいいところは、太陽光を暖かいと感じることができるところだ。夏の日差しは厄介だが、冬になると日向を選んで歩きたいほど太陽光を欲してしまう。太陽を撮る、そして太陽を感じる写真を撮るのは楽しい。レンズを通して見る光の世界は、時として肉眼で見るよりも美しい。

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