脳とモラルのアップデート
2022.03.17PHOTOGRAPH and WOLFSMSの広告でユニセフがウクライナ募金を募っていたので、少額ながら小銭を寄付した。連日ウクライナの戦況が報じられているが、ロシアとウクライナにどんな未来が待っているのだろう。大規模な戦争を回避するため他国からの武力行使は期待できない以上、世界中でロシア内部の変革を望んでいるが、実際のところどんなシナリオが存在しているのか我々のような普通の人が知る由もない。日本ではロシアは侵略者でウクライナは被害者というのが一般的な見解で、暴走してるようにも思えるプーチンを誰か止めてくれと多く世界中の人が願っている。プーチンは本当に異常なのか?ロシアの侵略行為は悪なのか?
善悪の境界線が実はものすごく曖昧なことにほとんどの人は気づいていない。外を歩いていてたまらなく臭いウンチを踏んでしまったら靴についた強烈な匂いで気づくはずだが、いい悪いの境界線は無味無臭な澄んだ空気のようにサラッと潜んでいて普段気にすることもない。そう、実に「わかりにくい」のだ。かつて全世界で戦争があって多くの若者が自国の利益のために戦った。ライフルでも戦車でもミサイルでも信じられない数の殺戮が実行され、自国が勝つと司令官は英雄に、負けると戦犯として罰を受けた。殺すという行為はまったく同じ、立ち位置によって善悪が決まる。銃を持った盗人がやってきてそれに反撃して銃で撃ち殺すのはオッケーという法律、殴るのはいいけどナイフで刺したらアウト、爆弾で人を殺すのはいいけど生物兵器は倫理違反、デモ隊を10発殴っても許される警官、犯人を追いかけるとき他人の車を強引に奪って疾走するドラマのヒーロー、善悪の分岐をわかりにくくしている事例は数えたら切りがない。あれ?何かおかしいな、と気づく人が正常な人だ。人の世界では善悪の基準がひどく曖昧なのだ。法律や規則はその曖昧さをできるだけ明確なものにしようというチャレンジだが決して万能ではない。多くの場合、その行為を「程度」で判断して処理している。オフィスでの禁断の会話「きみ、彼氏いるの?」も年1回くらいなら大目に見てもらえるが、日に10回となると完全にセクハラ訴訟問題に発展しまう。何でもかんでも程度の問題か?と失笑してしまいそうになるが、まぁ、それが、現実的な落とし所なのだろう。事象ではなく数や量や質で線を引くのは、ベストではないが賢明とも言える。
いいのか悪いのかわからないまま日々を過ごすのはつらい。ルールや基準を持たないまま突き進んでいたら、「今日はいい1日だった」なんてことは決して思えず、いつの日かメンタルが崩壊してしまうかもしれない。だから、他人が考えた一般的なルールと、自分で決めた個人的なルールを軸に善悪を決定していく。社会との繋がりだけでなく、自分の健康やライフスタイルについてもある程度ルールがあった方が楽だ。ルールとはつまり「体のために朝起きたらストレッチしよう」とか「人の悪口は言わないでおこう」とか、そういった細々した事柄の集合である。写真を撮影するときの個人的なルールも、ないよりあった方が助かる。モノクロしか撮らないとか、美人しか撮らないとか、そういうシンプルかつ明確な主義でなくても、ささやかでもいいから何かしら主義やルールを持っておくと、余計な葛藤に振り回されなくてすむ。いいとか、悪いとか。それは本来曖昧で掴みどころのないものだか、自分なり線引して進んだ方が葛藤から自由になれる。心地よい制限の質を持続させるためには、主義やルールのアップデートが必要だ。毎年ガラッと変えるわけではない。自分の成長に合わせて、少しずつ変化させていくのだ。いままで何となく避けてきた表現をしてみる。普段撮らない時間帯に写真を撮ってみる。そういうことでも自分のルールはアップデートされていく。Aばかりだった自分が、B、C、Dと違ったものに触れてみて価値観が変化することもあれば、そういった経験を経てやはりAに戻ってくるということもある。結局のところAじゃねぇか、とも言えない。B、C、Dを経験したAとそうでないAとでは、同じAでもクオリティがまったく違うのだ。
ロシアとウクライナ、ルールを無視しモラルに欠けているのはどちらか?それは遠くの我々が客観的に見ると明白に思えるが、もっと客観的に「人間ってさ」という視点で見ると、人のモラリティがひどく曖昧なことに気付かされる。うちが良ければ他はどうでもいいという根本的なスタンスは、外交もビジネスも友情も個人も同じように根付いていて、世界大戦時代どころか数千年前から人のモラリティはそんなに変わっていないのかもしれない。これは過度に嘆くことではなく、人の「限界」なのかもしれない。そういう宿命と折り合いをつけるためにもアップデートは必要だ。しかし、まぁ、皮肉な話だが、政治家が安易に高齢者に5,000円をバラ撒こうとしている最中、我々普通の人は遠い国のために5,000円寄付しているのだ。いっそのこと、世界中から集めた莫大な寄付金を、様々な交換条件と共にロシアに寄付したらどうかと思ってしまう。世界のトップ達に世界平和というモラルが少しでもあれば、そういうアイデアがきっと生まれてくるはずだ。
このページの撮影機材
SONY
α7S(ILCE-7S)
OLYMPUS
PEN-F
PENTAX
Super Takumar 55mm F1.8
MINOLTA
MD Rokkor 50mm F1.4
Hawks Factory
Adapter
-
写真集「BLUE heels」
¥1,100 -
写真集「Nostalgia」
¥1,100 -
写真集「植物美術館」
¥1,100 -
写真集「花美 1」
¥1,100 -
写真集「花美 2」
¥1,100 -
写真集「花美 3」
¥1,100
column
- 2024.10.30レンジファインダーとの和解
- 2024.10.10黒潰れと白飛びの世界
- 2024.09.06モノクロ写真の追求
- 2024.07.23身軽なハンター Eureka 50mm
- 2024.06.28記録の写真
- 2024.06.01「P」「S」「A」モードの疑問
- 2024.05.11言葉にできない写真
- 2024.03.28強い者たちの正義
- 2024.02.25少数派に優しい Nikon Zf
- 2024.02.0135mm 凡庸者の可能性
- 2023.12.20それをする意味
- 2023.12.15テクノロジーと人の関係
- 2023.11.06Super Takumar 50mm F1.4
- 2023.09.03クソ野郎が撮る写真
- 2023.06.22花を撮る理由
- 2023.05.10写楽の日々
- 2023.03.21楽しい中望遠 APO-SKOPAR 90mm
- 2023.02.09太陽を撮る快楽
- 2023.01.13行ったり来たりの軌跡
- 2022.11.22タスクの向こうに幸福はない
- 2022.11.03LEICA M11の馬鹿ヤロウ
- 2022.09.20狙い通りに的を射る
- 2022.08.13LEICA M11と10本のレンズ
- 2022.07.08人知れず開催される「植物美術館」
- 2022.06.18日本人の遺伝子と「茶の道」
- 2022.06.07LEICA M11
- 2022.05.16写真の構図
- 2022.04.13NOKTON F1.5と50mmを巡る旅
- 2022.03.17脳とモラルのアップデート
- 2022.03.08海へ
- 2022.02.28世界の大きさと写真の世界
- 2022.01.29写真集をつくる
- 2021.12.31フィルム撮影の刺激
- 2021.11.29絞って撮るNokton Classic 35mm
- 2021.10.27時代遅れのロックンロール
- 2021.09.23雨モノクロ沈胴ズミクロン
- 2021.09.13拒絶する男
- 2021.08.22過去からのコンタクト
- 2021.07.26スポーツと音楽と写真
- 2021.07.19マイクロフォーサーズの魅力 2021
- 2021.06.24小さきもの
- 2021.05.26現実と絵画の間に
- 2021.05.11脳と体で撮る写真
- 2021.04.26理解不能なメッセージ
- 2021.04.03とっておく意味
- 2021.03.11モノクロで自由になる感性
- 2021.03.04もう恋なんてしない
- 2021.02.19ギリキリでスレスレへの挑戦
- 2021.02.09人間は動物よりも優れた生きものか?
- 2021.01.18写真の中のハーモニー
- 2020.12.24遠くへ
- 2020.12.11モノクロの世界と15mm
- 2020.11.06現像の愉しみ
- 2020.10.15ずっと使えそうなカメラ SONY α7S
- 2020.09.21写スンです GIZMON 17mm
- 2020.09.01矛盾ハンター
- 2020.07.29朽ちていくもの
- 2020.07.23花とペンズミ中毒
- 2020.07.15無駄に思えるプロセスは報われる
- 2020.06.24ズミタクマクロ
- 2020.06.19森へ
- 2020.05.25大人の夜の快楽
- 2020.05.04見直しと修正の日々
- 2020.04.13AM5:00の光と濃厚接触
- 2020.03.24何だってよくない人のPEN-F
- 2020.03.05濃紺への憧れ
- 2020.02.20NOKTON Classic 35mmとの再会
- 2020.02.15写真に写るのは事実か虚構か
- 2020.01.22流すか止めるか
- 2020.01.17ローコントラストの心情
- 2019.12.19後悔と懺悔の生きもの
- 2019.12.10飽きないものはない
- 2019.11.15小さな巨人 X100F
- 2019.10.24F8のキャパシティ
- 2019.10.05愛せる欠点とM-Rokkor40mm
- 2019.09.23植物採集の日々
- 2019.09.0263歳のキヤノン50mm
- 2019.08.22それは いい写真か悪い写真か
- 2019.08.14近くから遠くへ
- 2019.07.29雨を愛せる人になりたい
- 2019.07.081度しか味わえないその時間
- 2019.06.2465年前の古くないデザイン 1stズミクロン
- 2019.06.12街のデザインとスナップ写真
- 2019.05.15空の青 思い描く青空
- 2019.05.03近くに寄りたい欲求
- 2019.04.24変わらないフォーマット
- 2019.04.13常識と非常識の選択
- 2019.04.03ノーファインダーの快楽
- 2019.03.21ライカのデザイン
- 2019.02.26飽きないものの価値
- 2019.01.30NOKTON Classic 35mm
- 2019.01.17光と影のロジック
- 2019.01.01終わりに思う 始まりに思う
- 2018.12.17Takumarという名の友人
- 2018.12.06普通コンプレックス
- 2018.11.30季節を愛でる暮らし
- 2018.11.27失敗しない安全な道
- 2018.11.09終わりのない旅
- 2018.11.01M-Rokkor 28mmの底力
- 2018.10.19M-Rokkor 28mmの逆襲
- 2018.10.05焦点と非焦点
- 2018.09.26夜の撮影 α7R2 vs PEN-F
- 2018.09.18いま住んでいる場所が終の棲家になる
- 2018.09.10強烈な陽射しと夏のハラスメント
- 2018.08.30現役とリタイアの分岐点
- 2018.08.21過去との距離感
- 2018.07.10本来の姿とそこから見える景色
- 2018.06.16花の誘惑 無口な美人
- 2018.05.15欲望の建築とジェラシー
- 2018.04.14朝にしかないもの
- 2018.03.28過去の自分を裏切って何が悪い
- 2018.03.18夫婦とか家族とか
- 2018.03.01固定概念から自由になるための礎
- 2018.02.15ディテールを殺した写真
- 2018.02.07劣化することは悪いことだろうか?
- 2018.02.03マイクロフォーサーズの魅力
- 2017.12.27日本人は写真が好きな人種だと思う
lens
- LEICA Summicron 50mm F2 1st Collapsible
- Thypoch Eureka 50mm F2
- MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8
- MINOLTA M-Rokkor 40mm F2
- MINOLTA MD Rokkor 50mm F1.4
- Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Ⅲ
- Voigtlander COLOR-SKOPAR Vintage Line 21mm F3.5
- Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 Ⅱ MC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC
- Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 E-mount
- Voigtlander NOKTON Classic 40mm F1.4 SC
- Voigtlander NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II MC
- Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8
- PENTAX Super Takumar 50mm F1.4
- PENTAX Super Takumar 55mm F1.8
- PENTAX SMC Takumar 200mm F4
- Nikon Nikkor-H Auto 50mm f2
- Nikon Ai Micro-Nikkor 55mm f/2.8S
- CANON 50mm F1.8 Ⅱ
- CANON 100mm F3.5 Ⅱ
- ZEISS Planar T*2/50 ZM
- GIZMON Wtulens 17mm F16
- OLYMPUS M.ZUIKO 12mm F2.0
- OLYMPUS M.ZUIKO 25mm F1.8
- OLYMPUS M.ZUIKO 40-150mm F4.0-5.6R
- LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 Ⅱ
- All Photograph