飽きないものの価値

2019.02.26PHOTOGRAPH and WOLF

M-Rokkor28mm 写真01

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

何でもすぐに飽きてしまう。新しいものに目が移り、色々なものをつかんでは手放す生き方をしてきた。性分と言えばそれまで。落ち着きのない奴だと言われれば、おっしゃる通りである。すぐに飽きるタイプの節操のない人間は、何かを継続することが難しい。僕が続けてこれたことと言えば、現在の職業と妻との暮らしくらい。結婚してから夢遊病者のように妻のやわらかいホッペを触り続けているが、いまのところまだ飽きていない。飽きてしまうことの要因は、一体どこにあるのか。自分の未熟さを棚に上げて考えると、その対象が飽きさせない魅力を持っているかどうかにかかっている。魅力に奥行きがあれば、さらにいい。

M-Rokkor28mm 写真02

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

M-Rokkor28mm 写真03

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

飽きない、と言えばM-Rokkor 28mm F2.8もその1つ。28mmという画角、コンパクトさ、期待に応える写り。古いレンズでありながら、現代においても賞賛に値する素晴らしき単焦点レンズだ。オールドレンズというと、どことなく淡くモヤモヤっとしてハッキリしない描写をイメージしてしまいがちだが、そういう誤解を吹き飛ばしてくれるのがM-Rokkor 28mm F2.8だ。シャープさがないとかコントラストが弱いとか、そういうオールド感はこのレンズにはない。ライカとかツァイスとか同じ28mmで他にもいいレンズはあるのだろうけど、いまのところ何1つ不満がないので長く付き合える気がしている。つい1年ほど前、マイクロフォーサーズのカメラで撮ったときにはこのレンズの良さに気づくことができなかった。カメラをフルサイズのα7R2にしてからビシビシとこのレンズの魅力を感じるようになり、いまではお気に入りの1つになってしまった。評価の違いはセンサーサイズの違いからなのか?それとも自分の考え方が変化したからなのか?今となっては自分でもよくわからない。

M-Rokkor28mm 写真04

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

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SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

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SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

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SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

M-Rokkor 28mmの魅力としては、広角のくせに開放で撮ると情緒的に撮れ、絞るとスキのないストイックな描写を魅せてくれることだ。オールドレンズを使う理由として「情緒的」は外せない理由だけど、時にはビシっとしてほしい、と思うのが人というもの。「だけじゃない」というのは、飽きないことの大きなポイントかもしれない。

優しいだけじゃない。甘いだけじゃない。鋭いだけじゃない。古いだけじゃない。色んなものに形容される「だけじゃない」は確かに魅力的だ。その反対に「だけ」という表現は否定的な意味を持って使われることが多い。辛いだけのカレー。甘いだけのチョコレート。あの人はただ優しいだけ。彼は顔がいいだけ。「だけ」は、どうもつまらない。「だけ」のもの、人、現象は魅力に乏しくすぐに飽きてしまう。

M-Rokkor28mm 写真13

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

M-Rokkor28mm 写真14

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

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SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

ある一定期間「飽きない」と感じられたものには価値がある。普遍的な価値ではなく、あくまで個人的な価値であっても、そういうものは大切にした方がいい。なぜ、飽きないのかを少し掘り下げて考えてみると、鏡を覗いただけではわからない本来の自分の姿が垣間見えるかもしれない。

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